彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)






「自殺する奴は、頭が悪くて弱いから自滅する。菅原凛が死んで、あたしは困ることはないからね。ただ―――――――」






少し、間をおいてから悪霊は言った。








「今までイジメてきた奴の中では、菅原凛は長持ちしてるおもちゃだからね・・・もう少し楽しませてほしいね。」




(楽しませてほしい?)




「たいくつしてるあたしを楽しませるためにも、菅原凛にはまだ生きててもらわないと困る。だからこそ、適度にイジメて、適度に優しくして、長持ちさせる予定かな?」
「飴と鞭ってことか~?さすが俺の女だぜ、ルノア?愛してるぜ。」
「・・・大好きよ、アダム。菅原凛というおもちゃを見つけてくれて、ありがとう。」







そう言いあうと、公衆の面前で口づけをかわす最低最悪カップル。







「~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」







声にならない怒りが渦巻く。
立ち上がり、周りが冷やかすのをお構いなしに、互いの唇をむさぼりあう男女に手を伸ばそうとした瞬間。







〈凛!今どこにいる?〉

「!?」







瑞希お兄ちゃんの声がした。





(なんで瑞希お兄ちゃんが聞こえるの!?)





これ、ヤマトがつけてくれたスマホのイヤホンから聞こえてるよね?

え?瑞希お兄ちゃん、凛道蓮に、電話してくれてるの?





そうとしか思えない状況。
困惑していれば、さらに瑞希お兄ちゃんは語りかけてきた。





〈トイレだって聞いたけど、うんこか?ちょっと時間かかり過ぎじゃねぇ?〉

(うんこ・・・。)





それで私は我に返る。
伸ばしていた手を下に下げる。





〈おーい、返事できないほどふんばってるのかぁ~?それとも、ゲリで便所から出れないのか!?大丈夫か!?〉

「・・・。」

(本当に・・・このお方は・・・・・瑞希お兄ちゃんは・・・・・・。)





きびすを返し、渕上達から離れる。





〈凛、マジで具合悪いのか!?お兄ちゃん、水なしでも飲める下痢ピタの薬持ってるから、とどけてやろうか!?どこの便所にいるんだ!?〉

「薬は不要です。」





そう返事をした時、私はVIP席から出ていた。







「ちょっと・・・精神統一していたら、時間がたっていました。」
〈脅かすなよ!!心配しただろう?とにかく、すぐに自分の陣地に戻って来い!待ってるから!〉
「―――――――――押忍。」







瑞希お兄ちゃんのおかげで、イレギュラーな場外乱闘は避けられた。