「ルノアさぁ~ぶっちゃけ、アダム君と凛道さんのどっちが好きなわけ?」
そんな会話が耳に届くまで近くなった時、私は渕上ルノアの背後までたどりついていた。
渕上の周りには、自分の席を離れて、渕上の側にたむろしているクラスメート達の姿があった。
渕上が座る席は最前列で、そこから後ろはがら空きになっていた。
幸運にも、渕上ルノアの真後ろの席が空いていた。
だから気配を消して無言で着席した。
ほどなくして、ターゲット達の会話が聞こえてきた。
(いったい、何を話してるのか――――――――!?)
「菅原凛の奴、どうしてるかな?」
聞こえてきたのは私の話。
息を殺して、耳を澄ませれば、ひどいやり取りが聞こえてきた。
「菅原凛、ルノアに謝るかな~?」
「フッチーどっちにかけてる?」
「別に。けど、謝罪動画が手に入るのは時間の問題だよ。」
「なになに!?なにかしたの!?」
「教えて!フッチー様!」
「いいよ・・・♪正義の味方気取りで、『菅原凛の謝罪姿を撮って見せるから連絡先教えて下さい!』っていう配信者が多くてさ。だから、適当に選んだ奴らに、あたしのスマホの番号教えて、いつでも動画配信がくるようにしたの。」
「マジ―!?ルノア頭いいよねー♪」
「さっすが、人を利用する名人♪」
「今の時点で、どれぐらい道が来てるんだよ、ルノア。」
「それが、集まりが悪いし、イレギュラーが発生してんのよね。」
「イレギュラーだと?」
聞き返す飯塚アダムに、渕上ルノアはうなずきながら言った。
「菅原凛のふりして作って投稿したアカウントにアクセスした奴のスマホ、パソコン、タブレットが、ウィルス感染して壊れたって報告が来てるのよ。」
「「「ウィルス感染」」」
(!?さっそく、ヤマトの仕事ぶりが発揮してるみたいね。)
ホッとする私に対し、不満げな口調で渕上ルノアは語る。


