彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)






トイレだと噓をついて、ヤマトと雷太から離れる。
その際、『凛道蓮』の姿では目立ちすぎるので、ヤマトのフード・・・・は、ド派手な阪神タイガーズカラーのラメ入りだからダメなので、ダメもとで雷太が着ていたフードを貸してくれないか頼んだ。





「え!?俺のフードを凛先輩が!?貸します貸します!!なんなら、献上します♪」
「貸してくれるだけでいいよ!ありがとう!」





そう伝えて、特攻服の上着を脱ぎ、コートを羽織りながら離れる。





「凛、これ。」





その際、ヤマトが私の耳にスマホのイヤホンをつけ、ポケットに何か入れてくれた。
ポケットに手を突っ込んで形を探る。





(もしかして、ボイスレコーダー?)





目だけで確認すれば、うなずかれた。
同時に小声で、耳元でささやかれた。





「時間通り帰ってきてや。帰ってけーへん場合、イヤホンの方に電話する。」
「・・・わかりました。」





それでヤマトの肩を叩き、お礼を伝える。





「いってらっしゃい!凛先輩!!」





2人から足早に離れ、花道を逆走する。
すぐさま、関係者専用通路を抜け、一般客席のスペースに足を踏み入れる。
速足で歩きながら、フードを頭にかぶれば、視界がかろうじて見えるものだった。
人にぶつからないように気をつけながら、観戦席へ―――――――渕上ルノアが座っていた場所へと向かった。





(確か、あそこのはず!)





近づいてみれば、渕上が座っているのはVIP席。
西岸高校が陣取っている、一番きれいな席だった。





「あーストップ!ストップ!坊主!パスは持ってるか!?」





VIPパスポートがなければ入れないが―――――――





「これで。」
「うん、OK!通っていいぞ!」





つなぐが何かあった時のためにと用意してくれていたものが役に立った。
一歩、一歩、悪霊へと近づいて行く。