ヤマトの部屋で、凛道蓮から菅原凛に変身する。
最小限の荷物をかけカバンに入れて、コソコソとヤマトのマンションから外へ出る。
最寄りのスーパーに到着したところで、そこに設置されている電話ボックスから電話をかける。
ワンコールののち、すぐに相手は電話に出てくれた。
〈・・・もしもし?〉
「船越師範!」
〈愛弟子か!?〉
「ご連絡ができず、申し訳ありませんでした!ネットに私のスマホの番号とアドレスが掲載され、スマホが使えなくて、今までご連絡できなかったのです!」
〈そうだったのかい・・・昨日はどこで過ごしたんだい?家に帰ってないだろう?〉
「どうしてそれを御存じなのですか!?」
知らないふりをして聞けば、大きくため息をつく船越師範。
〈愛弟子の両親が、私の道場に乗り込んできてね。『娘を返せ!』としつこくて。〉
「私の両親が押し掛けたのですか!?申し訳ありませんでした!」
〈愛弟子が謝ることじゃないからいいんだよ。幸い、後藤ちゃんが来てくれて、誤解が解けたから大丈夫だよ。〉
「後藤先生が?」
ケガをしてから、私達と行動を別にしていた人物の名前が上がる。
「後藤先生、渕上先生の道場に来られたのですか!?」
〈教えたからね。ついでに、今後の対策を話し合おうと、後藤ちゃんを待ってるところに、招かれざる客の愛弟子の両親が来たわけだ。〉
「か、重ね重ね、ご迷惑をおかけします!!」
(あの毒親が!!)
〔★凛は自分の両親を悪認定した★〕
〈実はね、今、道場の留守を頼んでいる後藤先生と合流することになってるんだけど、愛弟子も来てくれないかい?〉
「え!?私・・・ですか?」
〈そうだよ。ストレートに言わせてもらうけど、愛弟子・・・・・・・両親にもう一度、チャンスを与える気持ちはあるかい?〉
「船越師範!?」
(それ、菅原凛にも言ったセリフじゃん!?もういいよ!バレてるのに、同じこと何回も言わなくていいよ!!)
若干イラッとしたけど、船越師範は、船越師範なりに、私の秘密を守ろうとしてくれていることは伝わってきた。
それが、船越師範の手の上で転がることだとしても、菅原凛と凛道蓮を分けて考えてくれることに安堵を覚える。


