「僕に何の御用ですか?」
「菅原凛さんのご両親から、彼女を家に連れ戻すように言われた。」
「連れ戻す?」
聞きたくない単語に顔をしかめれば、あきれ顔で船越師範は言った。
「あちらさん、何を勘違いしたのか・・・被害者の病院でいなくなった娘が、娘の味方をしていた元習い事の先生の家にいると思い込んで怒鳴りこんできたんだよ。」
「・・・かくまっていたのですね。」
「馬鹿言うんじゃないよ!かくまってるわけがない。それなのに、今日中に連れ帰らないと、未成年者を誘拐した罪で警察に被害届を出すと、岩倉と名乗る若い坊やの警官を連れて脅してきたのさ。」
(岩倉だと!?)
あいつ、渕上ルノアの味方だろう?
(どうなってるの・・・?)
一晩帰らなかっただけで、どれだけ状況変化してるのよ!?
困惑する私をよそに、渕上師範は話し始めた。
「私はね、菅原凛に会ったら言おうと思ってることがある。」
「では、伝えられるといいですね。」
「そうだね。『もう一度両親にチャンスをあげたらどうだ』、と。」
「!?」
このババア!!
聞きたくないから、聞かないような流れにしたのに、強引にしゃべりやがった!!
「あんたどう思う、凛道蓮?」
「・・・なにがですか?」
「菅原凛の両親に、ダメ元で娘と和解するチャンスを、最後は娘を信じてくれるかどうか試す行為を、実行させていいと思うかい?」
「それは・・・」
必要だろうか・・・?
いや、俺が答えるわけにはいかない。
俺は『凛道蓮』。
これは菅原凛の話だ。
「菅原凛さんに会って、直接本人に確認を取るべきことではないですか?」
「私が不良が嫌いなのは、必要最低限の常識がないからだよ。」
そう言った船越師範の顔に表情はなかった。
「だから自分の道場から―――――例え、道場をやめた教え子であっても、不良の道には進んでほしくない。それが恋心ゆえの一途な気持ちによるものであってもね。」
「そうですか。」
船越師範の考えはわかった。
遠回しに、私に説教をしているみたいね。


