彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)






(そうよ・・・いじめ記録ノート・・・奪われても大丈夫よ・・・。)





「菅原さん!いじめられた内容、覚えてる範囲でいいから、またノートに書いてもらえるかしら・・・?」
「可能です。」
「今日は・・・・・無理だけど、日を改めて、校長先生と理事長に直訴するから!」
「そうしよう!こっちの準備が万全じゃない今、攻め込んでも負け戦になる!」
「・・・わかりました。」



(日を改めた方がいいのかな・・・。)





チラッと腕時計を見れば、そろそろ学校に向かわなければ、遅刻する時間になっていた。



(家に引き返してから、登校するのは無理ね・・・)



後藤先生は知らない。

船越師範も知らない。



(私の切り札のことを。)



好きなレトロ漫画のキャラクターは言った。



『切り札は先に見せるな』・・・と。





(どうしてみんな、いじめの記録ノートが一冊だけだと思ってるのだろう?)

まさか、この私が1冊しか記録してないとでも思った?

(瑞希お兄ちゃんやヤマトやシゲ先生以外の人間を、簡単に信用できない。)

だから渡さなかった。

(後藤先生に渡したいじめ記録ノートは、毎日書いていたいじめ記録ノートを模写したもの。)

万が一を考え、数冊分、同じ内容の予備を作った。





(後藤先生に渡したのは、予備のうちの1冊。オリジナルは、ヤマトの家に保管してある。)





だから、渕上が不意打ちで家に来て、両親が勝手に家にあげて、盗まれたとしても、またオリジナルを元に書けばいいだけだから問題はない。





(用心に越したことはないのだから・・・!)





そんな思いで、私を必死に慰めてくれる後藤先生と船越師範と伊藤巡査に対し、気丈にふるまってみせたのだった。





〔★凛の方が1枚上手だった★〕