「伊藤巡査さんは、私達に親切にして下さいました。悪くないです。そうですよね、後藤先生?」
「そうですよ!あの長山という男、私の手をいやらしく握って―――――セクハラですわ!一緒にあの長山も訴えてやりたい!!」
「そうだよ!そうしちまいな、後藤ちゃん!!」
「みなさん・・・・聞いて下さい。」
肩を震わせながら、絞り出すような声で伊藤巡査は言った。
「今のやり取りは・・・すべて録音されています。自分は――――――弱い立場の警官のため、出来ることは限られてしまいますが、長山巡査部長の不適切な発言は、ダメ元で上へ報告します。それしかできませんが、しっかり報告させて頂きます。もちろん、後藤さんが苦情を入れることも止めません。」
(ダメ元?)
「・・・ダメ元なのですか?」
伊藤巡査の発言を受け、思わず聞いてしまった。
「長山という警察官は、いつも、あんなふうに被害者を二重に傷つけるのですか?」
「・・・申し訳ありません。」
私の質問に、謝罪で返してくる伊藤巡査。
それで、お互いの顔を見合わせる私達。
しばらくの沈黙の後で、最初に口を開いたのは船越師範だった。
「長山という奴の階級と面は覚えた。とりあえず、被害届を書く前に、先に病院へ行こう。」
「でしたら、パトカーでお送りします。」
「よしとくれ!モラハラの上に、セクハラまである警察官と一緒に病院まで行くなんざ、凹んでるメンタルがさらに悪くなっちまうよ!」
「そ、そうですね。」
「とにかく、診断書を取ったらその足で、伊藤巡査、あんたがいる派出所に被害届を出しに行く。長山がいるのは気に入らないから、対応はあんた、伊藤巡査にしてもらうよ!」
「わかりました!責任をもって、調書を作らせて頂きます!」
話がまとまったところで、今度は私を見ながら船越師範は言った。
「そういうことだから愛弟子・・・本当に申し訳ない・・・!いじめの証拠を・・・!」
「ごめんなさい、菅原さん!!本当にごめんなさい!!」
「いいんです。後藤先生の命が取られなかったのなら、それでいいです。後藤先生がご無事なら、いいんですよ。」
「菅原さんっ・・・!」
「愛弟子・・・お前って奴は、可愛いな・・・!」
そう言いながら、2人がかりで私を抱きしめてくる大人の女性達。


