朝から憂鬱だった。
菅原凛として、学校へと向かう足取りは重い。
(結局私は、円城寺君と戦わなきゃいけない・・・。)
友達と殴り合いなんてしたくない。
それだけでも嫌な気分になるのに――――――――
(船越師範に、1人2役がバレてしまうなんて・・・・・!!)
師範は最後まで、私のことを『凛道蓮』と呼んでくれた。
でも、あの口ぶりだと、見抜いてしまっている。
(凛道蓮=菅原凛、だと・・・。)
見抜かれている。
(弱みを握られた!!)
秘密を知られたじゃなくて、弱みと思ったのは、私を脅して手合わせを申し込んできたから。
(本当に船越師範に、私のいじめ問題解決の協力をお願いし続けていいの・・・!?)
後藤先生からの電話では、今日の朝一で、校長と理事長に報告すると言っていた。
それも、船越師範付きで。
(私の弱みを握っている船越師範と後藤先生が・・・)
後藤先生はまだいい。
だけど船越師範は――――――――
(菅原凛のいじめの弱みと、凛道蓮の男装と偽名の弱み、両方を知っている。)
・・・・・・・・生かしておいていいものか・・・?
(こちらもなにか、船越師範の弱みを握った方がよくない?)
〔★凛はダークな思考に染まっていた★〕
ルッルッルッー♪
「え!?」
突然、音が鳴った。
正確には、絶対になるはずのない菅原凛の携帯が鳴った。
(誰!?お母さん!?)
スマホの中には、両親と後藤先生と船越師範の番号と中学時代に親しかった数人しか入っていない。
高校に入学した頃には、同じ年の相手のLINEも入っていた。
でも、渕上ルノアからのいじめが始まってから、すべて削除した。
菅原凛のスマホに1番連絡を入れてくるのは、母親だ。
(言いたいことは登校前に、全部言う人なんだけどな・・・?)
不思議に思いながら、スマホの画面を見てギョッとする。
表示された名前はお母さんじゃない。
(船越師範!?)
一瞬、出るのがためらわれたが、思い切って画面をスライドした。


