目の前の人物を倒さなければ―――――――――最低でも、トンファーを1つ取り上げないと、私が困る。
『凛道蓮』と『菅原凛』、どちらの『凛』にも都合が悪い。
ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!
ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!
ガキン!ガキン!ガキン!
よける動作はなくなり、ひたすらトンファー同士がぶつかり合う。
前にも後ろにも動けない膠着状態。
(これは体力の削りあいになるかもしれない!!)
そう覚悟した時だった。
「あ―――――――――――――!!?真田瑞希が見たことない笑顔で凛道蓮を見てるっ!!!」
「え!?瑞希お兄ちゃん!!!?」
背後から響いた声。
(見たことない笑顔って、どんな笑顔!?)
見たい!!
(瑞希お兄ちゃんを見たい!!)
そう思った時には、船越師範を払いのけて振り返っていた。
ヒュン!!
ガキ―ン!!
バシ!!
「うわっ!?」
コン!!コン、コン、コロン!!コロコロコロ・・・・
「あ!?ターボババアがトンファー落としたぞ!!」
「瑞希お兄ちゃ―――――――――――――――ん!!」
知らない男子と私の声が重なる。
素早く船越師範から離れ、声がした方へダッシュ!!
「瑞希お兄ちゃん!!どこです!!?」
「うはははは!ウソでぇーす♪」
「ヤマトぉ!!?」
声がした先にいたのは、カチューシャとサングラスをつけた大男。
「うはははは!りーんー!場外乱闘するスケジュールがあるやなんて、わし、聞いてへんで~!?」
「ヤマト!!瑞希お兄ちゃんは!?嘘って、どういうこと!?」
「うはははは!おーい!おばあちゃーん!凛は約束通り、おばあちゃんの武器叩き落としたでぇー!そうなると、試合終了でええんやろー!?」
「え!?」
(私が船越師範の武器を叩き落とした!?)
ヤマトの声で、慌てて船越師範を見れば、手に持っているトンファーは1本だけ。
もう1本は、足元に落ちていた。
「うはははは!試合終了でええでっかー!?」
陽気に聞くヤマトに、目が点になっていた船越師範の表情が変わる。
「・・・・・・くっくっくっ!」
コン!
ガシ!
楽しそうに笑うと、足で落ちているトンファーを蹴り上げて、空いてる手でキャッチする。
「良い友達を持ってるじゃないか、凛道蓮!!」
「え?」
「凛道蓮!!今夜はお前の勝ちだよ!!」
そう言うと、私に背を向けて歩き出す船越師範。
「あの!!」
思わずその背中に声をかければ、首だけで振り返りながら船越師範は言った。
「お前さんのタイマン、楽しみにしてるよ!!」
ニヤリと笑うと、「どきな!」と怒鳴りながら、人混みに道を作って退場する船越師範。
「・・・・・・・・勝ったの、僕?」
「うはははは!そーやろう!おめでとさん!!」
実感がわかない私の背中を、ヤマトはバシバシ叩きながら笑うのだった。


