彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)






目の前の人物を倒さなければ―――――――――最低でも、トンファーを1つ取り上げないと、私が困る。

『凛道蓮』と『菅原凛』、どちらの『凛』にも都合が悪い。





ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!

ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!

ガキン!ガキン!ガキン!





よける動作はなくなり、ひたすらトンファー同士がぶつかり合う。
前にも後ろにも動けない膠着状態。





(これは体力の削りあいになるかもしれない!!)





そう覚悟した時だった。







「あ―――――――――――――!!?真田瑞希が見たことない笑顔で凛道蓮を見てるっ!!!」

「え!?瑞希お兄ちゃん!!!?」







背後から響いた声。







(見たことない笑顔って、どんな笑顔!?)

見たい!!

(瑞希お兄ちゃんを見たい!!)







そう思った時には、船越師範を払いのけて振り返っていた。







ヒュン!!

ガキ―ン!!

バシ!!

「うわっ!?」

コン!!コン、コン、コロン!!コロコロコロ・・・・



「あ!?ターボババアがトンファー落としたぞ!!」
「瑞希お兄ちゃ―――――――――――――――ん!!」







知らない男子と私の声が重なる。
素早く船越師範から離れ、声がした方へダッシュ!!






「瑞希お兄ちゃん!!どこです!!?」

「うはははは!ウソでぇーす♪」

「ヤマトぉ!!?」





声がした先にいたのは、カチューシャとサングラスをつけた大男。





「うはははは!りーんー!場外乱闘するスケジュールがあるやなんて、わし、聞いてへんで~!?」
「ヤマト!!瑞希お兄ちゃんは!?嘘って、どういうこと!?」
「うはははは!おーい!おばあちゃーん!凛は約束通り、おばあちゃんの武器叩き落としたでぇー!そうなると、試合終了でええんやろー!?」

「え!?」

(私が船越師範の武器を叩き落とした!?)





ヤマトの声で、慌てて船越師範を見れば、手に持っているトンファーは1本だけ。
もう1本は、足元に落ちていた。






「うはははは!試合終了でええでっかー!?」






陽気に聞くヤマトに、目が点になっていた船越師範の表情が変わる。





「・・・・・・くっくっくっ!」

コン!

ガシ!





楽しそうに笑うと、足で落ちているトンファーを蹴り上げて、空いてる手でキャッチする。







「良い友達を持ってるじゃないか、凛道蓮!!」
「え?」
「凛道蓮!!今夜はお前の勝ちだよ!!」







そう言うと、私に背を向けて歩き出す船越師範。





「あの!!」





思わずその背中に声をかければ、首だけで振り返りながら船越師範は言った。







「お前さんのタイマン、楽しみにしてるよ!!」







ニヤリと笑うと、「どきな!」と怒鳴りながら、人混みに道を作って退場する船越師範。








「・・・・・・・・勝ったの、僕?」
「うはははは!そーやろう!おめでとさん!!」







実感がわかない私の背中を、ヤマトはバシバシ叩きながら笑うのだった。