いない。
「凛、いないけど、だれか知らねぇーか?」
もうすぐ大河の試合が始まる。
それなのに凛がいない。
俺の問いに、忍びの後輩が答えた。
「我が君なら、花摘みに出かけられましたが?」
「はあ~!?凛先輩が花摘み!?どこに花が咲いてるんだよ!?」
「雷太君、花をつみに行くっていうのは、お手洗いに行くことをきれいな言葉で言う時に使ういい方なのよ。」
「マジすか!?2号さん!すげー!物知りじゃん!?」
「そうか・・・凛は便所か・・・。」
(それにしては、おせぇなぁ・・・。)
そんな思いで立ち上がろうとしたら、腕をつかまれた。
「公平さに欠くぞ、瑞希。」
「伊織。」
「リングの上から、客席はよく見える。今も、円城寺はお前を見ているぞ。」
その言葉で大河のいる方を見れば、本人と目が合う。
大河は俺に向かって一礼すると、視線をそらせてしまった。
「やれやれ・・・瑞希が自分を見ている時は、視線を合わせないのか・・・。」
「え?俺、ずっと大河に見られたんか?」
「当たり前だろう。・・・引退して鈍ったか?」
「そんなんじゃねぇーぞ!」
「そうそう♪瑞希は天然なだけだ♪」
「烈司!」
「でも、凛ちゃんの帰りが遅いようなら、あたしが探しに行くわねぇ~」
「わははははは!!イベント起きてるかもしれねぇからな!!試合身に来て、人間殴れりゃ一石二鳥だぜ!」
「モニカ、わりぃな。皇助、お前は何もするなよ。」
そう告げた時だった。
〈みなさん、お待たせしました!ただ今より、東山、西岸、南原、北条の4校のトップによる四神校の東西南北のバトルロワイヤルを始めたいと思います!〉
リングに立つ実況アナウンサーのアキナの声が会場に、俺の耳に届く。
「凛・・・。」
(無事だといいんだけどな―――――――――)
考え過ぎだと願いながら、大河を応援するために座り直した。


