「・・・帰るか。」
戻ったら戻ったで、瑞希お兄ちゃんが円城寺君話を延々としそうだけど――――――
(瑞希お兄ちゃん、『笑顔』で話してたからな・・・)
好きな人の笑顔が見れるなら、この際話の内容は目をつぶろう。
そう思い、来た道を戻ろうとした時だった。
(え!?)
前方からやってくる1人の人物に釘付けになる。
(船越師範!?)
相手が、武術の指導を受けた先生だったから。
若者ばかりの人ごみの中、老婦人がいるのはすごく目立った。
(どうしてここにいるの・・・!?)
疑問に思ったが、だからといって声をかけるわけにはいかない。
あくまで私は『凛道蓮』であって、船越師範の知らない人間なのだ。
関わってはいけない。
身バレを防ぐためにも、知らん顔してやり過ごさなければいけない。
一歩、また一歩と、私と船越師範の距離が近くなる。
(大丈夫よ凛!絶対に、気づかれたりしない!平常心でいるのよ!)
そう自分に言い聞かせ、顔を上げて正面だけを見据える。
無表情を作り、場違いな老女など眼中にない姿勢を貫く。
私と船越師範が向き合う距離までくる。
そして、お互いがお互いを見ることなく並んだ。
(よかった!!何も言われなかった・・・!!)
そう安心した瞬間、船越師範がすれ違いざまにつぶやいた。
「愛弟子。」
「!?」
(バレた―――――――――――――――!!?)
ダメよ!バレたとしても、しらを切り通さなきゃ!!
無視して、背を向けて歩き続ければ――――――
「愛弟子が話さないなら、愛弟子の恋心を、私が片思い相手に伝えることにしよう。」
「なっ!?」
(なに言い出すの!?)
反射的に振り返れば、距離的に離れていると思っていた船越師範が目の前にいた。
「うわっ!?」
思わず驚きの声を上げれば、無表情で船越師範は続ける。


