彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)






「後藤先生に渡したのはいいが・・・本当に原本の方を渡してよかったのかい?コピーの方がよかったんじゃないのかい?」
「・・・いいえ、オリジナルを渡した方が、説得力もあると思いますので。」
「けど、万が一、敵の手に渡ったら厄介だよ?」
「後藤先生を信じることにしました。」
「愛弟子がそれで納得してるならいいけどね・・・。」





確かに、オリジナルを渡すのは賭けだと思った。
それでも、いい加減、いじめられることに疲れてしまったので、終わらせることができるのなら終わらせたい。





「一応、愛弟子をおろしたら、今夜、後藤先生と愛弟子のいじめノートを読む約束をしてる。」
「情報の共有をして下さるのですか?」
「当然だよ!武術は基礎がしっかりしてないと、良い攻撃にはつながらない。あたしと後藤先生は、運命共同体だからね。」
「申し訳ありません・・・お手数をおかけします。」
「謝るんじゃないよ!まだまだ時間はある!切り札ぐらいは準備するつもりだよ!」
「・・・切り札、ですか。」
「愛弟子、愛弟子のいじめ消滅作戦、いじめの記録ノートを切り札として使うのは弱い。あてにしていた、いじめを行う現場の録音は、いじめっ子達に気づかれてとれていない。それでも、確実に勝てる方法を探すのは、武術の試合と同じだ。わかるね?」
「諦めるなと言うことですね?」
「さすが愛弟子だ!それでこそ、あたしの最後の弟子だよ!!」





そう言ってハグしてくる師範に、何とも言えない気持ちになる。





(切り札が・・・菅原凛をいじめている証言を取れていないのは痛い。果たして、渕上家ファーストのあゆみが丘学園で、どこまで私の自己申告のいじめの記録が武器になるか・・・)

まあ、ないよりマシよね。

ないよりマシだし、多くて困ることもないから・・・後藤先生に私の直筆のいじめ記録ノートを渡したこと、無駄ではないと思いたい。





(いじめの記録、書くのが大変なぐらいたくさんあったからな・・・。)





「へいへい、お嬢ちゃん!テンション下がってるお嬢ちゃんにピッタリなドリンクあるけど飲む!?」
「ドリンク、ですか?」
「そうそう、女子高生ちゃん!少しでも応援したいから、頑張って用意したんだよ!」
船越師範との話がひと段落した時、運転席と助手席に座る男性二人が菅原凛に話しかけてきた。





(どうしよう・・・)

もらっていいのかな?





迷った末、船越師範を見れば、笑顔でうなずく。