彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)




放課後、テストが終わり、解散の合図が出ると同時に教室から出た。
早歩きで進み、人気のないルートで教職員専用駐車場まで向かう。
一目がなくなったあたりで、凛道蓮スイッチをオンにして全力疾走した。



「あ!?」



それで、後ろの方から驚きの声が上がったが気にしない。
尾行されているのは、想定内。
今日、『例の物』を受け渡す約束をしていたので、下駄箱には寄らない。
カバンの中に、予備のローファーを入れていた。
それが入った袋の中身を、上履きと入れ替え、ローファーをはいて地面に飛び降りる。
たくさんの車が止まっている駐車場に駆け込んだ。



「くそ!?どこいきやがった!?」
「探し出せ!」
「命令すんなよ!」
「菅原の野郎~手間とらせやがって!」



物陰に身を潜めていれば、そんな会話が聞こえた。
声からして中山達だろう。





(早く後藤先生と合流しなきゃ。)





そう思った時、視界に、赤の車の側から白い手が出てくる。





(!?)





その手は、おいでおいでと手招きをする。
それだけで誰だかわかり、四つん這いになりながら、手の主の元へ行った。





「後藤先生。」
「菅原さん、無事でよかった。」





名前を呼べば、ガバッと抱きしめられてしまった。



「こっちにいないぞ!」
「あっちじゃないか!?」
「つーか、もう外に出たのかもしれねぇ!」



その声に反応するように、後藤先生が私を守るように抱きしめる。
これ以上、ここに長居するのは無用だ。
そう思ったので、後藤先生に話を切り出した。





「後藤先生、あのー」
「わかってるよ。『例の物』だよね。ここで受け取るわ。」





そう言われ、うなずいてからカバンから厚みのあるノートを手渡した。
それを後藤先生は、素早く持っていたカバンにしまい込んだ。





「ありがとう。ここは私が食い止めるから、教員の車が出入りする道から外に出て。そこに、船越さんが車を待機させてるから。」
「!?わかりました。ありがとうございます。」





お礼を言えば、ギューと抱きしめられた後、解放された。
そして、私は四つん這いで、後藤先生の側から離れ、車が出入りする場所へと進む。
それに合わせるように、後藤先生は立ち上がると、菅原凛を見つけるために、うろちょろしている中山達に声をかけた。