彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)




1限目のテストが終わった時、我慢ができなくてトイレに行った。
いじめが始まってから、極力水分を摂らない生活をしていた。
理由は、机から離れると、帰ってきた時に机の中身をぶちまけられているからだ。
それを拾い集めている間に予鈴が鳴り、席に座っていない菅原凛をどの教科の教師も注意してくる。
初めは、事情を説明したが、クラスメート達が「ウソつきコール」をする。
それを否定し、反発すればするほど、被害はひどくなる。
教師たちは、私に味方しなくなる。
だから、水分補給を控えるなどする自衛をすることで、トイレに行くことがないようにして、自分の荷物がある場所から離れなかった。
しかし今回、いじめがピタッとやんだこともあり、試し行為として水分を普通にとってトイレに行くことをしてみた。
結果、私の机はキレイなままで、私物をぶちまけられることもなかった。





(だからといって、プランGが何かわからない以上、いじめが終わったと思っちゃいけないのよね・・・。)





そう思いながら、女子トイレの個室で用を足しているとLINEが鳴った。
急いで後始末をして、個室から出て手を洗ってハンカチで手を拭く。
スマホを取り出してLINE画面を見れば、相手はアドレスを交換したばかりの後藤先生からだった。





〈菅原さん、こんにちは。
昨夜約束した通り、例の物は持って来てくれたかな?
放課後、職員専用駐車場で受け渡しは出来るかな?〉



(『例の物』・・・・・・・)

持ってきた。



だからLINEで返事をした。



〈ご用意しました。
持ってきます。〉





それにスタンプで『了解!』の返事がきたので、同じくスタンプで『よろしくお願いします。』の返事を返した。





(ついに、『例の物』が役立つ時が来るのね。)





そう思いながら、スマホをポケットにしまって、女子トイレを後にしたのだった。