ヤマトの家の近くのスーパーマーケットで降ろしてもらう。
一目を気にしながら、コソコソとヤマトのマンションまで行く。
マンションの中に入ってしまえば、こちらのもの。
勝手知ったるなんとかというか・・・ヤマトの家の前に行き、いつも通り合いかぎで中に入る。
「うははははは!!凛、おかえりー!!」
「・・・ただいま・・・ヤマト。」
(『おかえり』、か・・・。)
ヤマトは血のつながった家族ではない。
赤の他人。
だけど、友達で大親友。
「・・・悪くないな。」
「うははははは!!送り届けられる生活がかぁ~!?」
「・・・いいや。ヤマトに、『おかえり』って言ってもらえることだよ。」
「ほな、瑞希はんに言われたら、もっと幸せちゃうか?」
「え?」
「もういっそ、家出して、瑞希はんの家で暮らせばええやん?」
「・・・おい!なに言い出すんだ?」
「数学じゃ、-と-を足せばプラスになる。けど、人間世界じゃ、+にはならへん。悪循環や。」
「・・・俺は今、心が弱ってる。夢物語はやめてくれ。」
「そうか・・・かんにんな。」
「ああ・・・。」
そう言葉を交わすと、私はヤマトから借りている部屋に入った。
(ヤマトの奴・・・急にどうしちまったんだ・・・?)
腑に落ちない、モヤモヤ気持ちにはなったが、考えないようにした。
瑞希お兄ちゃんと生活することを、夢見たことは何度でもある。
それはまるで、現実逃避のような妄想だった。
(いずれ・・・菅原凛として告白するにしても、まだ先の話・・・もっと、仲良くなってから出ないと言えないよ・・・)
男じゃなくて女でした、なんてまだ言えない。
凛という名前が苗字ではなく、名前だと告げる勇気はまだない。
やるせない気持ちで制服を脱ぎ捨て、凛道蓮に変身する。
シルキロールをしっかり身に着け、部屋から出れば、ヤマトも出かける準備万端になっていた。
「うははははは!!ほな、行こうか、凛!?」
「ああ・・・俺のアッシーよろしくな。」
「うははははは!!凛専属の運転手は、わしだけや!誰にも譲らへんから安心せい!!」
「ありがとう・・・。」
こうして今日も、いつも通り瑞希お兄ちゃんが待つ場所へと向かったのだった。


