彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)






終始後ろを気にしながら歩く。





「どうしたの、菅原さん?誰か来てるの?」
「・・・見られてる気がしまして・・・。」





目視での確認はできないが、空手で鍛えた五感はさえていた。





(尾行されてる。)





つけられることに気づくに疎い私でもわかるぐらいの尾行。





(敵もあせってるって証拠よね・・・!?ここは冷静に行動しなくちゃ!!)

「後藤先生・・・」
「なに?」
「緊急事態なので、歩きながら話します。今、私達、尾行されてます。」
「え!?」
「しっ!お静かに!平静を装って下さい!」
「あ、うん、ごめんね・・・!」





ぎこちない動きをしつつも、同意してくれた女性教諭。
数歩歩いたところで、後藤先生が小声で話しかけてきた。



「菅原さん・・・私達が尾行されてるって本当なの・・・?確かにあなたは昨日、B組の全員に尾行されていたと、船越さんから聞いてはいるけど・・・」
「そうでなければ、説明がつかないことがあります。」
「どういうこと?」
「私、昨日から誰にもいじめられてないんです。」
「え!?」
「お静かに!・・・いつもなら、必ず暴言と暴行を受けますが、船越師範と再会して以来、渕上ルノア達からは、ずっといない存在として扱われ、私に接触してこないのです。B組はもちろん、他のクラスの人達・・・全校生徒がです。」
「菅原さん!いない存在扱いされることも、いじめの1つなのよ?あなた・・・いじめられすぎて、感覚がマヒしてない?」
「空気扱いの判断は、難しいところです。そもそも私は、いじめが始まってから、誰かに話しかけたりしていません。今日だって1日、誰にも話しかけていません。私が話しかけて、返事をしないなら無視になりますが、私からアクションをかけることはしていませんので、この場合は―――――」
「・・・そっか・・・そうよね・・・判断が難しいところよね・・・」





私の説明を聞き、後藤先生は納得してくれた。