女子トイレから出た私は、警戒しながら1年B組に入る。
「1限目化学、ヤバいわ!」
「現代文の方が面倒だろう?」
「なんで、科学と物理が同じ日にかぶるんだよー」
できるだけ、自然体を装いながら入室する。
しかし――――――
「期末テスト終わったら、四神校のバトルロワイアルに絶対行く!」
「ガチでそれな!唯一の楽しみだからな!」
「ペンライトでも持ってく~?」
「え?東西南北、どこが何色かわからないんだけどー?」
「普通に『投げキッスして♪』うちわだけでよくなーい?」
「えー!?それバトルロワイヤルで使うの!?凛道さんの時の方がよくない!?」
「あ、それもそっか!凛道さん、視線くれたらいいなぁ~♪」
いつもだったら、「ゴミが来た!」と言われるが、今日は言われない。
「・・・。」
(みんなして、『菅原凛』を無視する作戦にしたのか・・・?)
警戒は解除せず、いつも通り、自分の席に細工をされてないか確かめながら座る。
(何も起きない・・・。)
それがかえって不気味に思えた。
(・・・ちと、コンタクトとるか・・・・)
普段の私なら、絶対しないことをする。
(悪霊はどこにいる?)
教室内、渕上ルノアがいつもいる定位置の方を見る。
「フッチー、凛道さんのタイマン見に行く時の服、買いに行かない?」
「・・・出歩くの面倒だから、外商に頼む。」
「え!?ルノア、百貨店で買うの!?」
「・・・いろいろ試したいからね。」
「そっかーフッチーと出かけられると思ったのに、残ねーん!」
取り巻きに囲まれ、相変わらずつめの手入れをしていた。
すぐに視線をそらして、タブレットを開く。
(なにか、仕掛けてくる様子はない・・・。)
私が録音してると思って、下手に関わるよりも、空気扱いする作戦に出たか・・・。
テスト前の最後のおさらいをするふりをしながら、周囲の気配も探ってみるが――――
「凛道さんのイベント、テスト後でよかったわ!」
「そうそう!先にやられると、テストに集中できないっての!」
「お前、赤点ギリだもんな~」
「お前だってひどい点とってるだろうー?」
「ちょっと男子うるさい!」
「勉強に集中できないんだけど!?」
「はいはい、すみませーん!」
クラスメート達からも、不穏な言動はみられなかった。
それでも――――――
(油断しちゃダメよ、凛!)
自分に言い聞かせる。
(相手は、渕上ルノア。度が過ぎるほど、警戒し過ぎても良いぐらいの極悪人。)
そのことを、今まで身をもって経験してきたので、予鈴がなってテストが始まってからも、私は警戒を一切とかなかった。


