恋慕う先輩と帰宅困難者になったなら


 なーんてことを夢見ながら、知らない人たちに囲まれた席で、なるべく音を立てないように、ボソボソとお弁当を食べ始めた。

 窓側の席。
 音はしないものの、雷がバチバチッと落ちるのが、さっきからよく見える。
 雨も降り始めた。

 外はすごい風なんだろうな。
 木々の枝の曲がり具合から、何となく想像できる。

 家の周辺はどうなのかな?
 コンパクト、かつ軽量な折り畳み傘しか持っていない。
 いつもなら気に入っているポイントのはずが、今日は不安材料にしかならない。

 そこへ定型文ではないアナウンスが入る。

「雨、風ともに強まってきました。安全のために、これより速度を落として運行いたします。各駅到着時間が遅れますことをお詫び申し上げます」

 ええっ⁉︎

 私にとっては、はじめてのことだ。
 途端に怖くなる。

 出張の日当が出るのだから、と奮発して購入した松花堂弁当を堪能するどころではない。
 いや、徐行運転するなら、車内で過ごす時間が増えるのだから、むしろゆっくり味わうべきだったのかも……
 しかし、気持ちがそわそわしてしまい、残りを急いで食べ切ってしまった。