恋慕う先輩と帰宅困難者になったなら


 けれど、主任は言い捨てだけして、シャワーを浴びにいってしまった。

 テーブルの上に視線を移す。

 せっかくグラスが2つあるのに、先にひとりで飲むなんて、ありえないでしょ。
 何して待っていようか。

 リビング中をじっくり見て回りたかったけれど、後ろめたい行為な気もする。
 そこで、目を閉じ、修行僧のようにじっとしていることにした。
 静かに息を吸って吐いて──

 視覚情報を遮断したお陰で、頭の中がクリアになっていく。

 普通じゃないトラブルに、思いがけないラッキー。
 そのせいで、この先は奇跡だって起こるんじゃないか、と過剰に期待してしまっていた。
 そう気づくことができた。

 期待し過ぎていたせいで、肩透かしを喰らってガッカリもしたけれど、そうだ!
 私、今主任のお家にいるんだよ。
 それだけでも、すごいことなんじゃない?
 うん、十分奇跡だ!

 あっ、主任が戻ってくる。

 足音が近づいてくるにつれて、ドキドキしてきた。