恋慕う先輩と帰宅困難者になったなら


「さっぱりしたか?」

 主任は、少しも狼狽えていなかったし、驚いてもいなかった。
 ワインとおつまみをテーブルの上に出しているところだった。

 奇襲は不発に終わってしまった。
 ガッカリだ。

 でも、会社の机を思い出せば簡単に分かることだったじゃない。
 片付けるものなんて、最初からほとんどなかったに違いなかった。

「俺もシャワー浴びてくる。先に飲んで、何なら寝てくれててもいいから」

 テーブルの上には、さっきコンビニで買った物のほかに、グラスが2つ出ていた。

 主任は壁にベタ付けしていたソファを前方に移動させ、背もたれ部分を倒した。

「美村はここで寝てくれ」
「……ソファベッドをお持ちとは」

 期待をしているつもりはなかった。
 しかし、ほんのちょっとだけ夢みてしまっていたらしい。
 添い寝できるかも、と。

 そんなあっさりと現実を知らせてくれなくたっていいじゃない……

「その顔はするなって言っただろ」

 だから、その顔ってどんな顔⁉︎