恋慕う先輩と帰宅困難者になったなら

 生まれて25年というもの、この国の高速鉄道を疑うことはなかった。
 定刻通り運行するのだと信じてきた。

 まあ、子どもの頃はただ単によく分かっていなかったというだけだから、25年というのはさすがに言い過ぎだけれど、たぶん高校生くらいからはずっと。

 自分の予約席を見つけ、バッグを荷物棚に上げている間に、新幹線は静かに進み始める。

「……駅を時刻通りに出発いたしました」

 特急列車から乗り換えて、ようやくほっとひと息ついた。
 よかった、無事に帰れそう。

 予報では、『今夜から明け方にかけて、本州の天気は大荒れ』だそうだ。
 確かに、新幹線に乗る前にホームから見上げた雲は、猛スピードで空を流れていた。
 それと、これから雷と大雨を落としまくってやるぜ! という意気込みを感じさせる真っ黒い色をしていた。

 空の便で出張を予定していた同僚は、帰ってこられない可能性があるから、とリスケを余儀なくされた。
 その一方で、陸路の出張組は大丈夫だろう、という判断が下った。
 だから大崎主任と私も、本日予定通りに日帰り出張に出たのだった。