あの日の好きが、まだ胸で息をしてるから、君にもう一度伝えたい

「璃菜、ちょっといい?」



璃菜は、自分の第二ボタンをいじりながら「ん?」と首をかしげた。



「体育館裏、来て」



「え?なに?私、ボコられる?」



璃菜が、くすっと笑ってふざける。



「冗談言うなって」



俺がちょっと顔を赤くして言うと、璃菜は美奈と明弥の顔をちらっと見た。



美奈と明弥は、後ろで「がんばれ!」ってロパクして、大げさに親指を立てていた。



璃菜は首をすくめて、「はあ……しょうがないなあ」と言いながら俺についてきた。



体育館裏は、卒業式の日なのに誰もいなかった。



冷たい風が吹いて、どこか懐かしい空気がした。



璃菜は少し寒そうに腕をさすってから、俺の方を見た。



「……で?ボコるの?」



「ボコんねぇよ」



「ふふっ」



冗談を言って笑う璃菜を見て、少しだけ緊張が溶けた。



でも、言葉を出そうとした瞬間、心臓がすごい速さで鳴った。



「……俺さ、ずっと言いたかったことがあって」



「なに?」



「……最初にお前を見たときから……ずっと……」



言葉が詰まる。



璃菜は黙って俺の顔を見ていた。



「俺、お前のことが好きだ」



璃菜の目が少しだけ大きくなった。



俺は慌てて続けた。



「でも、いいんだ。返事とか、今はいらないから……」



返事を聞くのが怖かった。



それでも、言わなきゃいけなかった。



「…ずっと…ずっと言いたかったから……」



沈黙(ちんもく)が、春の風に溶けていった。



璃菜は少しだけ口を開いて、でも何も言わなかった。



ただ、「そっか…ありがとう」と小さく笑った。



桜の花びらが璃菜の髪にくっついた。



俺の恋は、そのとき終わったんだ。