あの日の好きが、まだ胸で息をしてるから、君にもう一度伝えたい

放課後の体育館は、昼間の喧騒(けんそう)とは違う空気に包まれている。



誰もいないときは静まり返っているのに、放課後になるとボールの跳ねる音や、笑い声や、色んな青春が混ざり合っていた。



そんな中、俺はいつもより少し早歩きでダンス部の部室へ向かった。



ダンスなんてやったことないのに、入部届を出した日の俺を思い出すと笑えてくる。



でもあのときの俺の頭の中には、璃菜の笑顔しかなかった。



先に部室にいたのは、同じ1年の美奈(みな)だった。




美奈は、璃菜と同じくダンス部に入っている明るい女の子で、最初から俺に話しかけてくれた。



「凪くん、璃菜と同じクラスなんでしょ?いいな〜」



「いい、って何が?」



「何がって、そりゃ……」



美奈がにやっと笑って続きを言おうとしたとき、後ろから「美奈ー」という声が聞こえてきた。



振り向くと、ポニーテールを結び直した璃菜が、スポーツバッグを肩にかけて近づいてきた。



「お疲れ〜。早いね」



「お疲れさま〜。でしょ!」



「今日筋肉痛になりそうだよね」



「そっかそっか。ふふっ、頑張れ」



璃菜にそう言われるだけで、筋肉痛も悪くない気がしてくるんだから単純だと思った。



体育館に移動して、音楽がかかると、部室でのゆるい空気が一気に変わる。



璃菜がステップを踏み始めると、そこにいる全員の視線が自然と集まった。



璃菜のダンスは本当に綺麗だった。



細くて白い腕がしなやかに動いて、ポニーテールが音楽に合わせて跳ねるたびに、何度も息をするのを忘れそうになった。



『可愛い』だけじゃなくて、ちゃんと格好いい。



真剣な横顔にドキドキして、でも目が合うと少し恥ずかしくて逸らしてしまう。



「おーい凪、固まってないで動けー!」



先輩に笑われて、慌ててステップを踏むけど、足は思うように動かなかった。