あの日の好きが、まだ胸で息をしてるから、君にもう一度伝えたい

それから、あっという間に季節は変わって。



新しいスーツを着て、新しい職場に立って。



それでも凪くんは、何もなかったみたいに私に話しかけてくれた。



だから私はーー



余計に、あのときよりもっと、凪くんをちゃんと見てしまった。



就職1年目の11月。



スマホに届いたメッセージを見たとき、心臓がまた、あの日みたいにうるさく鳴った。



『言いたいことがあるから電話してもいい?』



メッセージの通知を見た瞬間、私はスマホを持ったまま、しばらく固まってしまった。



何度も読み返しては、画面を閉じて、また開いて。



既読をつけるのも、怖くて少し遅れた。



『言いたいこと』って、何だろう。



いや、分かってる。



きっと、分かってる。



でも、どうして今なんだろう。



高校を卒業して、あの日から何もなかったみたいに笑って話してくれたのに。



私が何も言わないままだから、まだちゃんと向き合ってくれようとしてるんだ。



「…ずるいなぁ」



誰もいない部屋で、ぽつりと声に出してみる。




自分の心臓の音だけが、うるさく響いた。



結局その夜は、返事を返せなかった。



次の日。



仕事の休憩中、何度も通知を見ては“返さなきゃ”と思いながら、何を打てばいいのか分からなかった。



『今日の夜ならいいよ』



やっと送れた文字は、私の中の小さな決心だった。



そして、夜。



スマホが鳴るのをじっと待っていたら、少し汗ばんだ手が震えているのに気づいた。



呼吸を整えながら、私の中であの日の凪くんの声が蘇(よみがえ)った。



『好きだ』



もし、もう一度言われたら、今度こそちゃんと答えなきゃ。



怖いけど、後悔だけはしたくない。



「…大丈夫、大丈夫」



小さくつぶやいたその瞬間、スマホが震えた。



画面に映る凪くんの名前を見て、胸の奥が熱くなる。



私は、ゆっくりと通話ボタンを押した。