あの日の好きが、まだ胸で息をしてるから、君にもう一度伝えたい

璃菜sideー

あのとき、私の心臓は、壊れそうなくらいにうるさかった。



卒業式の日。



凪くんに「璃菜、ちょっといい?」って言われたとき、美奈と明弥が後ろで『がんばれ』みたいな顔をしてたのを、私はちゃんと見てた。



でも、分かってなかったフリをした。



「私、ボコられる?」って言った自分の声が、少しだけ震えてたのは、きっと凪くんにはバレてなかったと思う。



体育館裏に着いたとき、まだ桜の蕾は固くて、風が少し冷たかった。



凪くんが言葉を探してるのが伝わってきた。



いつもみたいにくだらない話をしてくれればいいのにって思った。



でも、その次の瞬間に、私の世界は少しだけ変わった。



「……俺、お前のことが好きだ」



聞いた瞬間、胸の奥がぎゅっと苦しくなった。



嬉しかった。



本当に嬉しかった。



でも、怖かった。



もし、ここで「私も」って言ったら、何かが大きく変わってしまいそうだった。



美奈と、明弥と、凪くんと。



4人でいる時間が大好きだった。



凪くんと2人だけの特別になるのが、怖かった。



「返事はいらない」



そう言われたとき、救われた気がした。



だから私は、ただ笑って「ありがとう」と言った。