美奈sideー
「やっぱり、そうだと思ったんだよね」
ダンス部の部室の隅で、私は小さく笑った。
卒業式の前日。
教室ではもう誰も勉強なんかしてなくて、私と明弥は廊下に座り込んで話していた。
明弥がチョコレートをくれた。
「疲れた顔してんぞ」って言ってたけど、正直、疲れてなんかない。
私の頭の中は、凪くんと璃菜のことばかりだった。
「ずっと気づいてたよ、私」
チョコを一口かじって、明弥を見上げると、あいつはいつもみたいにニヤっと笑った。
だけどなんだろう…どこか無理しているようにも見える。
「だよなー。俺も思ってた。つか、分かりやすすぎんだろあいつ」
「璃菜には気づかれなかったのがすごいんじゃない?」
「璃菜は鈍感(どんかん)だしな」
2人で声を殺して笑った。
璃菜と凪くんは、なんとなく出席番号が前後で一緒にいる時間が長かった。
最初は誰もが“仲いいな”くらいにしか思わなかった。
でも私は知ってる。
凪くんが璃菜を見てるときだけ、少しだけ声のトーンが変わるのを。
璃菜が練習で踊るとき、ステップを踏む横で、凪くんがちょっと不器用に真似する姿。
どう見たって、好きじゃなきゃあんな必死な顔しない。
「で、明日告るんだって?」
明弥がチョコを口に放り込んで、わざとらしく私を見た。
「うん。さっき聞いた。『明日言うわ』って」
「応援してんの?」
「当たり前じゃん」
「そっか」
本当はちょっと寂しい。
仲のいい4人でいる時間が変わってしまう気がして。
でも、凪くんの気持ちがずっと伝わらないままなんて、もっと嫌だった。
「明弥はどう思ってるの?」
私が聞くと、明弥は珍しく真面目な顔をした。
「……俺はあいつが振られても、ふつーにまた笑って遊んでるとこしか想像できねーな」
「まぁ、それはそうだね」
卒業式当日、璃菜を見送ったときのことを、私はずっと覚えてる。
「璃菜、ちょっといい?」
凪くんが璃菜を呼び出すときの、あの緊張した背中。
明弥と私は、何も言わずに顔を見合わせた。
お互いに小さく、口の形で『がんばれ』って言った。
璃菜は首をかしげて笑ってたけど、私たちは分かってた。
あのときから、あの告白が成功しても失敗しても、4人の関係が変わってしまうことも、全部分かってた。
それでも、私は思った。
“言ってよかったんだよ。あのときも、今も”
END.
「やっぱり、そうだと思ったんだよね」
ダンス部の部室の隅で、私は小さく笑った。
卒業式の前日。
教室ではもう誰も勉強なんかしてなくて、私と明弥は廊下に座り込んで話していた。
明弥がチョコレートをくれた。
「疲れた顔してんぞ」って言ってたけど、正直、疲れてなんかない。
私の頭の中は、凪くんと璃菜のことばかりだった。
「ずっと気づいてたよ、私」
チョコを一口かじって、明弥を見上げると、あいつはいつもみたいにニヤっと笑った。
だけどなんだろう…どこか無理しているようにも見える。
「だよなー。俺も思ってた。つか、分かりやすすぎんだろあいつ」
「璃菜には気づかれなかったのがすごいんじゃない?」
「璃菜は鈍感(どんかん)だしな」
2人で声を殺して笑った。
璃菜と凪くんは、なんとなく出席番号が前後で一緒にいる時間が長かった。
最初は誰もが“仲いいな”くらいにしか思わなかった。
でも私は知ってる。
凪くんが璃菜を見てるときだけ、少しだけ声のトーンが変わるのを。
璃菜が練習で踊るとき、ステップを踏む横で、凪くんがちょっと不器用に真似する姿。
どう見たって、好きじゃなきゃあんな必死な顔しない。
「で、明日告るんだって?」
明弥がチョコを口に放り込んで、わざとらしく私を見た。
「うん。さっき聞いた。『明日言うわ』って」
「応援してんの?」
「当たり前じゃん」
「そっか」
本当はちょっと寂しい。
仲のいい4人でいる時間が変わってしまう気がして。
でも、凪くんの気持ちがずっと伝わらないままなんて、もっと嫌だった。
「明弥はどう思ってるの?」
私が聞くと、明弥は珍しく真面目な顔をした。
「……俺はあいつが振られても、ふつーにまた笑って遊んでるとこしか想像できねーな」
「まぁ、それはそうだね」
卒業式当日、璃菜を見送ったときのことを、私はずっと覚えてる。
「璃菜、ちょっといい?」
凪くんが璃菜を呼び出すときの、あの緊張した背中。
明弥と私は、何も言わずに顔を見合わせた。
お互いに小さく、口の形で『がんばれ』って言った。
璃菜は首をかしげて笑ってたけど、私たちは分かってた。
あのときから、あの告白が成功しても失敗しても、4人の関係が変わってしまうことも、全部分かってた。
それでも、私は思った。
“言ってよかったんだよ。あのときも、今も”
END.
