あの日の好きが、まだ胸で息をしてるから、君にもう一度伝えたい

春の風は、どこかくすぐったい。



制服に袖を通したばかりの俺は、まだ新品の革靴のきしむ音を気にしながら、正門をくぐった。



桜の花びらが肩に落ちて、手で払うたびに舞い上がる。



校舎の前には、同じように真新しい制服を着た生徒たちが集まっていた。



ーー高校生活。



正直、不安と期待がごちゃまぜで、心臓が忙しかった。



そんなときだった。



少し先に立っていたひとりの女の子が、風に髪を揺らした。



長い髪を高い位置で結んだポニーテールが、朝の太陽の光に透けてきらきらして見えた。



桜の花びらと光の中で、その子だけがやけに綺麗だった。



横顔しか見えなかったけど、笑ったときに白い肌が春の陽射しを反射して、一瞬、本当に天使かと思った。



「……誰だ?あの子…」



思わず小さくつぶやいて、胸の奥がぎゅっとなった。



こんな気持ちは初めてだった。



入学式が終わり、教室に戻ると、運命なんてあるわけないと思っていた俺は息をのんだ。



教室の一番前の席に、その子が座っていた。



思わず目が合ったがすぐに逸らしてしまった。



自分の席を確認すると、胸の鼓動が早くなるのを感じた。



俺の席はその子の真後ろだった。



柔らかく笑って、「あれ?」と声を漏らした彼女の声がやけに心地よくて、頭が真っ白になった。



「えっと……よろしくね、凪(なぎ)くんだっけ?」



「……え、あ、うん、よろしく……。なんで名前…」



もう声が裏返るのをどうにか隠すのに必死だった。



「私の後ろの席、誰だろうって思って見ちゃってた」



「そうなんだ」



「うん。私、璃菜(りな)っていいます」



名前を聞いた瞬間、俺の頭の中で何かが始まった気がした。



教科書の配布、自己紹介、初めてのHR。



先生の話なんて、ほとんど耳に入らなかった。



休み時間、俺は緊張でずっとプリントをいじっていたのに、璃菜は気さくに話しかけてくれた。



「ねぇ、さっきの体育館寒くなかった?私ずっと鳥肌立ってたんだけど」


「え?そ、そう?俺は全然…」



「あはは、じゃあ強いんだね」



笑った顔を近くで見ると、本当に綺麗で、でも笑い方がちょっといたずらっぽくて、可愛すぎて心臓が忙しかった。