もし、片岡 伸一の言うことが本当だとして陽菜紀がハニートラップを仕掛けたとしたのなら、その相手に中瀬 灯理をあてがうことはしなかった、と言うのか。
「う、嘘だと思うのなら確認してください。当時の写真を陽菜紀がSNSで投稿してる筈ですから」
「なるほど、久保田」と久保田に顎をしゃくると、久保田は素早くスマホでチェック。件の投稿はすぐに現れた。
確かに、片岡 陽菜紀のホームパーティの様子に厚木 優子が居た。その他も厚木に良く似たタイプのどこか派手なタイプの女たちが揃っている。
ハニートラップか、この写真を見ると頷ける気がする。きっと陽菜紀は伸一の好みのタイプを用意したに違いない。その中でたまたま厚木 優子がヒットしたのだ。だが中瀬 灯理から聞いた話を繋ぎ合わせると、厚木と陽菜紀は手を組んでいたわけではなさそうだ。陽菜紀は厚木を利用して文字通り、伸一から金をむしり取ることだけを考えていたに違いない。
このメンバーの中に中瀬 灯理が居ないことから、単に旦那のタイプではなかったから外したのか、それとも何か他の理由があったのか―――……
「あいつは……陽菜紀には好きなヤツが居たんですよ。
だからカネだけ取って早く離婚したかったんでしょう」片岡 伸一が自嘲じみて言って俺と久保田は顏を合わせた。
好きな―――男……?
今まで片岡 伸一と厚木 優子の不倫のことにしか目を向けていなかったが、片岡 伸一が言ったハニートラップにかかったとすると、陽菜紀の方に本命が居たと頷ける。
「そいつの名前は……?」
「さぁ、はっきりとは知りませんが……時々あいつ電話でコソコソしてて……
鈴……何とか、とか呼んでたような…」
片岡 伸一は自信がなさそうに再び俯いた。
鈴―――……?
鈴原 則都――――



