玄関口にそれと分かるクローゼットがあった。犯人が見落とした筈はない。
その中に片岡 陽菜紀の靴が何足も置いてあった。どれもブランド物で高価なものだと分かった。サイズは24.0。前の三件の被害者の靴のサイズは22.5。
ここが引っかかるが、久保田の言ったことは一理ある。
「今、井東さんに片岡 伸一に、にんどう(任意同行の略)掛けてもらってます。帰ったら取り調べできるんじゃないですか?」
井東と言うのは俺の同僚で今回の事件を一緒に追っている。久保田め、仕事が早いな。昇進試験は一発合格に違いない。
「けれど俺は旦那がやった、と言う線は薄い気がします」
久保田の発言に「何で?」と俺が返すと
「タバコの吸い殻ですよ。陽菜紀の犯行現場のキッチンのシンクに捨ててあったタバコ。あれ、発見したの曽田さんですよね」
「ああ、確かに俺だが」
鑑識に回した結果、採取されたDNAの染色体はXX。
つまり、女だ―――
だが片岡 陽菜紀も中瀬 灯理も喫煙の習慣はない。厚木 優子がどうなのかはまだ調査中だが、腹の中に赤ん坊が居たとなると、たとえ喫煙者だったとしても控えるだろう。
片岡 陽菜紀は殺害される直前、女と会っていたと言う可能性は非常に高いが、まだその吸い殻の持ち主が誰なのか判明しない。それに例え女と会っていたとしても、その女が犯行に及んだのかどうか……
と考えているうちにテレビ局に着いた。



