「何やってるんですか!曽田さん」と久保田刑事さんが私たちを引きはがし、目をいからせている。
「ああ、すまん。つい…」と、この謝罪はきっと久保田刑事さんに向けられたものだろう。
「つい、じゃありませんよ!行き過ぎた捜査だと、訴えられたらどうするんですか」と久保田刑事さんがさらに目を吊り上げる。
訴えるなんて……とんでもない。ただ、少し……いいえ、かなり驚いたけれど。でもあの熱い抱擁で、驚くことに優ちゃんのことで興奮していた私は何とかいつものペースを取り戻すことができたのだ。
「もう一度聞きます。厚木 優子の子供の父親は片岡 伸一で間違いないのですね」と久保田刑事さんに事務的に聞かれ私は何とか頷いた。
「間違いないと言うか、優ちゃんはそう言っていました」
「だとしたら、たとえ流産しても自業自得ってヤツですよ。まぁお腹の子供には罪がないですが」と久保田刑事さんは淡々と言い
「しかし良く撮れてますね、この写真。まるでプロだ」と優ちゃんが持ってきた写真をまじまじと眺めて「これがあなたの名前でテレビ局に送られた、と?」と確認のために聞かれ
「はい。でも私、そんなことしてません。写真も撮ってないし、テレビ局に送るなんて…」
「これをテレビ局に送った犯人はあなた方のことを知り尽くしている人間だと考えられます。何か心当たりは?」と再び久保田刑事さんに聞かれて私は頭を横に振った。とりあえずは、私の話を信じてくれたようだ。
だけど、何故私の名前が利用されたのか、なんてそんなの見当もつかない。
「事態が少しややこしくなってきたな」と曽田刑事さんがため息を吐き、
「でも……この写真を送った人は私や優ちゃんを憎んでいるんです」私はきゅっとスカートの生地を握った。
「憎んでる?どうしてそんな風に思うんですか。あなた方が何かした、と言う身に覚えがあるのなら別ですが、それ以外、厚木 優子と中瀬さんの接点はあまりないですよね。敢えて言うのなら同じ小学校と中学校だった、と言うぐらいで」
久保田刑事さんが手帳をパラパラめくりながら確認していて、
「一つだけある」同じように手帳をめくっていた曽田刑事さんが目を細めた。
私と、久保田刑事さんが同時に曽田刑事さんを見る。
「片岡 陽菜紀と繋がっている」
陽菜紀と―――………



