金曜日の夜、散々デート用の服装に悩んだ。クローゼットから持っている全てのワードローブをひっぱり出してきてベッドに並べるも、自分の服の少なさと地味さに肩を落とした。そのほとんどがプチプライスの量販店で購入したもので、色も黒や茶、グレーと言ったものばかり。
その中で唯一女っぽいのが深いパープルのカーディガン。白いシンプルなブラウス。ほとんど白に近い淡いピンクの……程よい広がりの膝丈スカート、をひっぱり出して

「うん、これなら大丈夫か」と一人コーデ。姿見の中に自分を映し出し、体の前に服を当ててみる。大丈夫だけど……なんか私には似合わない気がする。
陽菜紀ならどう合わせるだろう。アクセサリーは?靴は?バッグは?この服に何をチョイスするだろう。

ほとんど無意識にスマホに手が伸び、まだ消せずにいる陽菜紀のアドレスを開いたところで、止まった。


そうだ、陽菜紀はもう居ない―――


改めて思い、私の手から服がバサリと音を立てて床に落ちた。その鏡の中に映った私は、部屋着しにしてる安物のスウェット上下姿だった。私にはこの方がお似合い、な気がした。

亡くなってもなお不動の美しさを放つ陽菜紀には一生なれない。

ううん『なりたい』なんて望んでいない。今までこうゆうことは全部陽菜紀に相談してきた。山川さんとデートが決まった際も陽菜紀に言おうか言おまいか悩んだが、結局話していただろう。
これからは―――全部一人で色々決めなきゃいけない。今までいかに私が陽菜紀に頼ってきたのかまざまざと思い知らされて、そしてその存在の大きさに

改めて気づいた。

―――次の日、私は早起きをしていつもより念入りに化粧を施し髪をセットすると、ちょっと早めにアクセサリーショップへ向かった。アクセサリーなんてほとんど自分で買ったことがない。けれど昨日選んだ服には何だか物寂しい気がしたんだ。
適当に選んで入ったアクセサリーショップはあまり高価な感じはしなかったけれど、そこそこ可愛いデザインが多く、高校生や大学生っぽい女の子のお客たちで賑わっていた。

どれにしよう。私はネックレスコーナーでいったりきたり。種類が多すぎて何を選んでいいのか分からない。とりあえずピンクっぽいパールが何連にも重なっているネックレスを手に取って見る。楕円形の可愛い鏡の中で合わせてみるも、何だか違う気がする。

「お客様~とってもお似合いですよ」と女の店員さんがにこにこ笑顔を張りつけて言ってくれたが、私は苦笑いを浮かべてそれを戻した。店員さんはそれでも諦めずに「何かお探しですか?」と聞いてきて、「あの……」と何か言うときだった。
楕円の鏡が多い中、一つだけ正方形の鏡が置いてあってその中に

陽菜紀を見た。