霊柩車が出発して、会場に残ったのはごくわずかな人数になった。そのほとんどが陽菜紀の実家の……つまりうちのご近所さんたちで、彼らも短く挨拶を交わしてやがて一人、また一人と会場から抜ける度に静けさが増す。
沙耶ちゃんは結局、あの後まるでダムが決壊したかのごとく泣き続け、化粧がドロドロに落ちていたことを気にしていた。元が美人だから気にすることないのに、そう言うことじゃないらしい。沙耶ちゃんはさっき入ってきた電話で後輩がトラブルを起こし急遽会社に出向くことになったのだ。
「灯理ちゃん、ごめんね。バタバタして。今度お茶でもしようね」と慌ただしくも立ち去っていき、後に残されたのは私と
鈴原さん
だった。
陽菜紀の遺影も棺桶もない、ただ空虚でがらんどうの中私たちは特に何かを話す、と言うわけではなくただ隣り合って座っていた。
豪華に飾られた檀上のお花を職員さんが丁寧な手つきで外して行く。その様も特に言葉を発することなく二人で眺めていた。やがてお花は一つ、また一つ……と無くなって最後には何も残らなかった。
「あの……そろそろお時間ですので」とスタッフさんにおずおずと声を掛けられ、私たちは揃って腰を上げた。
会場の外に出て入口玄関の所で別れる、と思っていた。
この人とも本当にこれで最後。
「それじゃあの…」と切り出すと、それと同時に被せるように鈴原さんが
「あの、このあとご予定は?食事でも行きません?」と言って、彼の言葉に私は目を開いた。
「あ……流石に不謹慎ですよね。でもあの、変な下心とかじゃなく、何か変な縁ですけれど知り合ったわけだし」とたどたどしく言い、不自然に顔を逸らす鈴原さん。
本当は私も陽菜紀のことまだいっぱい語りたかった。そして教えてほしかった。だから鈴原さんの申し出はありがたかった。
次の瞬間
「はい。行きます」と答えていた。



