好未ちゃんの言葉に私は目を見開いた。
「え―――……?」
「ごめん、違うんだったら悪かったわ。気を悪くしないでね」
好未ちゃんは慌てて手を振り、「さてと、私もそろそろ戻ろうかな。あの似非女王様が煩いから」と苦い表情を作る。似非女王様と言うのは、優ちゃんのことだろう。
好未ちゃんがお手洗いから出て行こうとするとき、ふと思い出したようにこちらに振り返った。
「ねぇ灯理ちゃん、彼氏いないっていったよね?」
言われて私は大きく頷いた。本当のことだ。
「さっきお通夜で灯理ちゃんと一緒だった人、あの人灯理ちゃんの彼氏だと思ったけど、違ったんだ」
お通夜で一緒だった人―――……?
鈴原―――さん……?
「違うよ、彼は陽菜紀のお友達でちょっとした成り行きがあって少し喋る程度」
私は慌てて全否定。何故こうまで必死なのか私自身分からなかったけれど、
「そっかー陽菜紀の友達かぁ……なら納得。でもあの人…どっかで見たことある気がするんだけどなー」
「SNSを通じて知ったんじゃない?陽菜紀のSNSにコメント残してたかもしれないし」
「そっか。そうかも。でもお似合いだったよ二人。彼、結構いいオトコじゃない?」
と好未ちゃんが意地悪っぽく笑い、私は顏から火が出る思い。
お似合い、と言われて照れくさいのと嬉しいのと。でもやっぱり申し訳なさが勝った。
だって鈴原さんが好きなのは陽菜紀だし、片思いしている相手は結婚してて、しかも非業の死を遂げた―――
洗面台の鏡を見る。それは陽菜紀の眠っていた棺桶の長方形の形ではなく、正四角形の形をしていた。その鏡に私が映り込む。その顔は“嫉妬”と言う感情を張りつけた酷く醜い形をした
“私”が映り込んでいた。



