今回、殺された片岡 陽菜紀は身長が163㎝。髪の色も黒ではなく人工的に染めた明るめの茶色だった。極めつけに
靴。
“L”事件は、七年前はじめて事件があった当初はあまりマスメディアに取り沙汰されていない。だが二回、三回と続く度にニュースもその規模が大きくなっていった。
連続殺人の被害者たちは殺害方法、職業は毎回違うが、その背格好は似通ったものがあり、皆150㎝と小柄で、黒髪、マンションまたはアパートに独り暮らしと言う生活だった。
ここ五年程“L”はなりを潜めていたが、何故五年経った今……しかも今までと違うタイプを狙ったのか。
しかも極めつけに
靴のサイズだ。
マスコミには公表されていないが加害者の“L”は毎回、被害者の靴の一足……しかも片方だけ、それも何故か右脚の方だけ持ち去っている。持ち去っている、と断言はできないが、片方の靴だけを無くす、なんて状況早々ないだろう。
靴はきっと“L”にとって殺人の記念品なのだ。
被害者たちのもう一つ共通している点。その誰もが靴のサイズが22.5と小さなものだと言うことだ。
さっきちらりと見た、中瀬 灯理の足のサイズも恐らく22.0~22.5.
推定体重40㎏前後で身長は150㎝弱。肩の下ぐらいまである長い黒髪。
本当は
今回狙われる被害者は中瀬 灯理の方だったんじゃないか―――
と、俺は推測する。
そう言えば中瀬 灯理がさっき興味深い話をしていた。
確か成人式の日、靴のヒールが折れた…とか。
―――彼女は現在27歳。成人式は七年前。
偶然か?
7と言う数字が妙に引っかかる。
「おい久保田。もう一度中瀬 灯理の周辺洗い出すぞ」
「え?片岡 陽菜紀じゃなく?」
「そっちもだが、どうもきなくさい。ホシが何故ターゲットに片岡 陽菜紀を選んだのか、そこの所を知りたい」
「分かりましたよ、じゃぁ次は誰に行きます?」若い刑事は先輩の意見を仰いでくる。
「とりあえずはそうだな。中瀬 灯理が出逢ったと言う、この男からにしようか」
俺は片岡 陽菜紀のマンションロビーで撮られた監視カメラの画像を宙にかざし、
「了解…」と相棒が頷くとほぼ同時だった。久保田の電話が鳴った。
「署からです。―――はい」と先輩を立ててくれてるのか、返事を無視するのかどちらか分からない後輩もまた、片岡 陽菜紀と同じ年代の“若者”だ。
俺は車のシートに深く背を預け、監視カメラの画像を眺めていた。中瀬 灯理は“鈴原さん”と呼んでいた。鈴原は特徴と言う特徴のない男だった。
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