「俺も大概だけど、あいつもそう言う意味で狂っていたよ。
それとも、君には人を狂わせるだけの魅力がある―――と言った方が正しいのか」
私が―――……私が全ての原因―――……?
私さえいなければ陽菜紀はそんな計画を立てなかっただろうし、沙耶ちゃんは今頃スウェーデンに行き、鈴原さんは殺人を犯すことをしなかった―――?
私さえ―――
その五文字が頭の中で忙しなくいったりきたりしている。
鈴原さんがここに来て嘘をつくはずはないし、きっと彼の言っていることは本当のことだろう。だけど全て真実だと思うと、頭が痛くなってきた。単なるワインの飲み過ぎでないことは明らかだ。
「陽菜紀が五年と言う間沈黙していた理由はそれだよ。結婚生活をしてカネを作り、裏で罠を仕掛け厚木 優子を利用して旦那を陥れた。
まさに、時が満ちたんだ。
全てが揃い、陽菜紀は最後のカードを出した。五年前の殺人事件の真相を君にバラす、と」
「でも、陽菜紀がいくらそんなこと言ったって証拠がないじゃない」
陽菜紀は確かに“炙り出し”の紙でL事件の犯人が鈴原さんだと言うことを教えてくれたけれど、何故気付いたのかは書かれていなかった。
「現に警察は見つけられなかったわ。靴の情報だって……」と言ったところでハっとなった。
「陽菜紀は見つけたのね―――あなたが犯行時持ち帰った靴を―――」
「ああ、ある程度察しはついていたのだろう。二年間の連続殺人と言うことで当時は結構騒がれていたからね。被害者の顔写真もテレビでたくさん放映されてたし、
君に良く似た風貌の女たちが被害者だ、と言う共通点も簡単に想像がつく。
俺は君にとって初恋の相手だ。再会したらまた恋が再燃するかもしれない。
だから俺が邪魔者だった。バイト先で再会したときも、だから最初は君に恋人が居ると言う嘘をでっちあげて、俺から君を遠ざけようとした」
そう言うこと―――……
私は額に手をつき、項垂れた。
全てが―――繋がった。
それも想像していたものと遥かに外れて、常軌を逸している。



