私は再び目をまばたいた。まばたきし過ぎて目が渇いてきた。
「そう言えば鈴原さん……あなたもそんなことを言っていたような…離婚して資産と慰謝料を奪え、と。陽菜紀にそう助言したのは鈴原さんなんでしょう?」
「確かに灯理さんにはそう言った。だけど、俺は陽菜紀に助言していない。彼女が計画の一部を鼻高々に語ってくれたときに聞いたものだ。それに対しての嘘を着いたことは謝る」
今更…そんな小さなことで謝られても……
「……でも、そんなに簡単に行くかしら」
「陽菜紀は結婚して一年ぐらい経って、頻繁にホームパーティーを開いていたよね」と同意を求められ私は頷いた。陽菜紀から聞いたわけではない。彼女のSNSをチェックしていたから知ってるのだ。
「でもあれは……陽菜紀がステキなご主人を女の子の友達に見せびらかしたかったんじゃないの?SNS映えもするし」と言うと
「じゃぁ君はそのホームパーティーに一度でも呼ばれた?」
と聞かれて、私はゆるゆると首を横に振った。確かに、ホームパーティーを開催していたのは知っていたけれど呼ばれたことは一度もない。
「……わ…私はあんまり華やかな場所向いてないし…それに、陽菜紀のSNS映えしないから…」
何度か見たことがある。ホームパーティーを開催しているとき集まった女性たちは、陽菜紀のように煌びやかで、美人で……私みたいな地味な女が混ざっていたらきっと陽菜紀の完璧な生活に邪魔だったのだろう。そう考えていた。それに対して嫉妬したり恨んだりはしていない。
私と陽菜紀の住む世界が違う、とそう思ってどこか線引きして納得していたから。
「違う。陽菜紀は灯理さん、君を旦那に紹介したくなかったんだよ。旦那の趣味はある程度分かっていたに違いないけれど、もし……君に好意を寄せたら?そして君も旦那を好きになったら?可能性なんてゼロじゃない。
そんな結末、陽菜紀は望んでいなかった。
何より君は陽菜紀にとって“特別”で。そんな軽くて浅はかではなく、表面だけの付き合いではなく、
心底から君を愛していたから。
陽菜紀が集めたトラップ用の女たちと一緒にしたくなかったんだろう」



