「それこそ……あなたの勘違いじゃない?だって私たち、幼馴染よ。
小さい頃から何をやるのも一緒で、いつも一緒だった。だから陽菜紀が私のことを好いてくれてるのは当然で……」
陽菜紀はことあるごとに私と行動を共にしたがった。でもそれは私が彼女の幼馴染でもあり親友でもある、と言う事実からだ。確かに今まで大きな喧嘩もしたことないし、少々行き過ぎぐらい仲が良かったふしはある。
事実、私も陽菜紀に少し“依存”していた部分があるから、陽菜紀から離れようとしていたのだ。陽菜紀のことは大好きだけれどいつまでも一緒と言うわけにはいかない。昔から陽菜紀に頼ってばかりいたから自立しようと最近思っていたところだ。
「それに陽菜紀は結婚したわ。素敵なご主人と。……結果、ああなってしまったけれど」
私のこと、沙耶ちゃんと同じ気持ちを抱いてくれていたのなら結婚なんてしないだろう。
「君は、陽菜紀のことをよぉく知っているようで、実は知らない。
鈴原さんに言われて私は複雑な感情を仕舞いこみ、本気でムっと顔をしかめた。
「あなただったら分かるって言うの?陽菜紀の近くに居たのは、あなたではなく私よ」
「分かるよ!」
鈴原さんは大きな声で言った。再びキャンドルの炎が大きく揺らめく。びくりと肩を揺らすと
「……ごめん……怒っては…いない。ただ、分かるのは俺と陽菜紀の感情は酷く似たものだった。
だから分かる。
沙耶香さんと違って陽菜紀の、たちが悪いのは、その気持ちに目を背けることではなく、自分自身向き合って、それを実行しようと目論んでいた。
ただし、殺人よりももっと確実で、陰湿で、しかし複雑だが、君を手に入れる
もっとも安全な方法――――」
安全な方法―――……と言うのが分からなかったし、未だに陽菜紀が私を幼馴染で親友以上に好きでいてくれた、と言う事実も頭の中で追いつかない。
「陽菜紀が旦那と結婚した理由、それはたった一つ。
カネだ」



