「俺が沙耶香さんを殺したい理由は―――
沙耶香さんが俺にとって脅威だと思ったからだ。

沙耶香さんは君を

―――好きだったんだよ」

沙耶ちゃんが―――……?

「……それはそうよ。だって私も好きだもの。沙耶ちゃんは昔から私を影でバカにしなかった…“陽菜紀の腰巾着”と言わなかったわ」私が弱々しく答えると

「君は頭が切れる反面、人の気持ち……特に好意にはとても鈍感なところがあるよね。きっと人から好かれる、と言うことに慣れてないんだね。その原因に常に女王の座に座り続けていた陽菜紀の存在が大きかったと思うけど。
まぁそんなアンバランスな所が魅力的と言えるけれど」

私はゆるゆると首を横に振った。

「嘘……」かろうじて言葉に出て、私は涙が溜まる目で鈴原さんを見据えた。鈴原さんが言わんとしていることが分かった。
「嘘よ……」もう一度言う。

「嘘じゃない」

鈴原さんは私の両頬をとても優しく包み込み、目尻から流れた涙をそっと親指の腹で拭った。


「沙耶香さんが君に抱いていた気持ちは俺と同じ種類の

“愛”だった」