カーテンを開けると、スラリとした男性の後ろ姿が目に入った。男性の中では平均的な身長。ややなで肩の肩に、見慣れたスーツ姿。

99.9%の確立で“彼”がここにやってくることを予想していたから、今更驚くことはなかった。けれど来てほしくなかった。

たった0.1%の可能性に賭けたけれど、私はその賭けに―――負けたのだろうか。

「その手を離して」

低く言って“彼”の背中に包丁の先を突きつけると、彼はまさか私が潜んでいたなんて思いも寄らなかったのだろう、びくりと肩を揺らしてそのふしに、カランと渇いた音を立てて何かが床に転がった。

ちらりとその転がったものに視線を向けると、それは注射器だった。しかもシリンジの中は空だ。空気を注射して空気塞栓症に至らせようと魂胆だ。これなら(のち)に沙耶ちゃんの死が不審死だと疑われない。
私はその注射器をつま先で蹴ると、彼の手に届かない場所まで注射器は転がっていった。

「沙耶ちゃんから離れて。今すぐに。


鈴原さん



いいえ




――――山田くん」