写真集をなぞる指先が僅かに震えている。
全てがこの一瞬で繋がった気がした。

もし―――……もし、今まで被害に遭った女性の家で発見された“L★”の意味がそうだったとしたら、これが“私”に対するメッセージ……?

淀んだ視界でノートPCが開いて青白い光を放っている。私はのろのろとPCに近づきマウスを動かし検索事項に『L事件』と入力した。するとすぐにいくつかの項目が現れた。

事件の概要は概、鈴原さんが話してくれた内容と相違ない。被害者は三名。職業も年齢も、更には殺され方もバラバラ。ただし殺害状況は決まって一緒で、一人暮らしのアパートもしくはマンションで殺されていた。

そして鏡に残された“L”と“★”の文字。

“L”は単なるアルファベットだと思ったのだろう、警察とマスコミは以後“L事件”と名を付けてその事件を追うが、犯行は二年で終わり、その後五年を経た。

『こんなメッセージみたいなものをわざわざ残すなんて、承認欲求が強い人間ですよ。俺はこの犯人がマスコミを利用して犯行を自慢したいのだと思います』

以前の鈴原さんの言葉を思い出す。私はこのメッセージがマスコミや警察、強いては“社会”そのものに訴えかけているものだと思っていたが、そうじゃなくたった一人に向けて―――だったら。

自分の推論に恐ろしくなって思わず身震いした。

違う……違う!!“彼”はそんな人じゃない!だって私と彼に共通点なんて何一つない。犯行は七年前から起こっていた。私は彼と出会ってすらいない。
と自分に言い聞かせるも、『本当にそうなのだろうか』と疑問がもたげる。

誰かに意見を求めたくなった。

けれど私に一体誰が残っている、と言うの?

優ちゃんと麻美ちゃんは逮捕された。
沙耶ちゃんは入院中で意識は未だ戻っていない。

好未ちゃんは―――……

ううん、相談したところでまともに取り合ってくれないだろう。だってこんなバカげた話、誰が信じるだろう。

捜査のことはその道のプロに任せるべきだ。とスマホを手に取り、ほとんど迷いなく曽田刑事さんのメモリを探しているときに、ふと曽田刑事さんが言った言葉が横切った。

『一種の吊り橋効果ってヤツですかね』

吊り橋効果と言うのは説明しないまでも、危機的状況にある二人組が大きな危険を前にすぐ傍に居る相手に恋愛感情を抱く効果だ。
優ちゃんと陽菜紀のご主人の不倫現場の写真をテレビ局に送りつけたのは

“私”の名前が使われていた。

そういう―――こと………