調べても分からないので、これ以上は時間の無駄と言うことで一旦は桜田門に帰ることにした。
「おぅ、どこ行ってたよ」と帰るなりイトさんが目を吊り上げて仁王立ち。久保田は俺に半ば強引に巻きこまれただけなのに、一緒になって説教食らわされた。
「で?お前さんがわざわざ足を運んだんだ、何か分かったのか」とイトさんは説教を長引かせるつもりなんてなかったのだろう、早々に区切りを付けて聞いてきて、俺は片岡 陽菜紀のSNS、無くなりかけのワインボトルの話や非常階段の死角を聞かせると、イトさんは面白そうに目を細めた。
「ほぉ、なるほど」
「だが肝心のマンション部分に入るやり方が分からない。各階の部屋の部分にもインターホンがありそこで呼び出すことも可能だが……玄関口で何故呼び出さなかったのか問われれば住人の一人と一緒になったって言えばここまで来れた理由に不信感を抱かないだろう」
「まぁそうだな」とイトさんも難しい顔で首を捻る。その横で久保田が捜査資料としてファイリングしてあるファイルをパラパラ捲って、そして何か発見したのか慌てて俺とイトさんの間に割って入ってきた。
「イトさん、曽田さん、これじゃないですかね」と久保田が指し示したのは、一人の住人の証言だった。この日18:30過ぎにピザの宅配が届いている。しかし住人の方は覚えがない、と言っている。
「まぁ確かにピザの宅配が来りゃ開けるだろうが……でも、インターホンで断られたら意味がないだろ」とイトさんがツッコみ
「いえ、その日あのマンションの何件かその被害……?のようなものに合ってます。その数は約半数の20軒です。ピザ屋も違えば、この20軒の住民の年齢や職業も異なります。イレギュラーに選ばれたと思ったら」
「なるほど、数打ちゃ当たる戦法か。20軒のうち1軒でもいい。いや、実際この中で2軒はピザ屋にごねられて仕方なく代金を払った者がいる。久保田、もう一度監視カメラの画像を見るぞ」
と言うと、用意の良い相棒はすでに監視カメラの画像をコピーしたDVDを手にしていて、俺はイトさんと顔を合わせた。
昇進試験を控えているらしいが、俺はこの時点ですでに『合格』を渡したい。
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