「あの、ところで刑事さんは何故それが分かったんですか?本人の自供ですか」と鈴原さんが聞き、曽田刑事さんと久保田刑事さんは顏を合わせると揃って鈴原さんを見た。見られている鈴原さんは頭に「?」マークを浮かべて首を傾げている。
「実は、我々は鈴原さん…あなたの勤めていたホテルに聞き込みにいったんですよ。荒井 沙耶香さんの足取りを洗っていたらホテルに行った形跡がありまして」
久保田刑事さんが言って、鈴原さんはちょっと驚いたように目をまばたきさせ自分を指さし。
「え……俺??」
「何故、荒井 沙耶香さんがあなたの勤めていたホテルに行ったのか分かりませんでしたが、従業員の話によるとあなたと片岡 陽菜紀に交際歴があったかどうかを聞いていったようです」と言われ、鈴原さんは苦い顔でぎこちなく笑った。
「交際と言うか……ちょっとした知り合い程度ですよ。恥ずかしい話ですが、俺が大学に入ったぐらいのとき人数合わせでほぼ無理やり合コンに誘われて、そこにいたのが陽菜紀です。
でも付き合うとかそうゆうのじゃなくて、その数年後ばったり再会しちゃって。お互いあまり顔が変わってなかったので『ああー』ってなって、それで職場の人間は誤解を……
俺も陽菜紀も変に説明するのが面倒で適当に『付き合っていた』と」
「そうだったんですね」と曽田刑事さんはメモをする。そう……だったんだ…と私も心の中でそっと頷いた。
「あの…ところでそれが何か関係してるんですか」と鈴原さんがちょっと居心地悪そうに顎を引き
「いえ、荒井 沙耶香さんが何を思ってそれを聞きに行ったのか分かりませんが、片岡 陽菜紀殺しにそれは関係ないでしょう」と曽田刑事さんはあっさり。
鈴原さんがほっと胸を撫で下ろす。「良かった…俺、容疑者にされたのかと思いましたよ」
私も……鈴原さんを疑っていたから、そのことを知れてちょっとほっとする。同時に一瞬でも鈴原さんを疑った自分が酷くいけないことをしたと思って恥じた。
そんなこととは露知らず曽田刑事さんはまたも数枚の写真を取り出し、私たちに写真を見せてきた。



