『事情聴取って言うのかな……職場まで来られてびっくり…まぁ正直ちょっと迷惑な所もあるし。灯理ちゃんが沙耶香と電話してたときのことなんでしょう?私は、まぁ……仕事中だったから、アリバイ…?って言うのがあるんだけれど』
私は沙耶ちゃんの容体を好未ちゃんに伝えると、好未ちゃんも流石に黙り込んでしまった。
『何か……変だよね。陽菜紀が殺されたってことだけで充分ショッキングなことなのに、それからうちらの周りで立て続けに変な事件や事故が多くない?』
と好未ちゃんに言われ、私は再び自分で書いたメモを見つめた。
陽菜紀が殺された日に、私ははじめて鈴原さんと会っている。彼が現れてから―――……
自分で自分の考えが恐ろしくなった。
でもホテルのレストランの店員さん藤堂さんと鈴原さんの証言?には食い違いがない。二人が裏で示し合わせていたのなら別だけれど、でも陽菜紀のお葬式にも現れなかった人と示し合わせるだろうか。やっぱり彼らの証言は正しいのだろう。
鈴原さんを疑うのはよくないよ。大体、鈴原さんには陽菜紀を殺す動機がない。
陽菜紀は離婚を考えていなかった。陽菜紀と付き合いたかった鈴原さんが邪魔に思うのは陽菜紀じゃなくご主人の方だ。それに陽菜紀亡き後送られてきたメールは鈴原さんにもきたじゃないか。
ああ、考えれば考える程、底なし沼にはまってしまう。
慌てて顔を横に振り、でも……陽菜紀殺しは鈴原さんではなくとも、沙耶ちゃんの場合は―――とまた鈴原さんに考えが向かってしまう。鈴原さんは沙耶ちゃんが事故に遭ったとき、電話に出なかった。営業中だったと言っていたが本当のことだろうか。
大体にして、今まで鈴原さんが私に優しくしてくれたのは、単に厚意からではなく私を監視するためだったら―――
ダメだ。疑いだしたらキリがない。
好未ちゃんは最後に『私も明日ぐらい沙耶香の病院行ってみる』と言って電話は切れた。
その次の日、私は何とか口実をつけて恒例になっている鈴原さんの送りを断りたかったが、鈴原さんは頑なだった。残業をして遅くなる、と言えばそれまで待つと言うし、実家に寄って帰ると言えばそこまで送る、と言う。とうとう断る口実を失って私は鈴原さんに送られることになった。
何となく、いつも以上に鈴原さんと距離を開けて歩き、なるべく人通りの多い道を選んだ。鈴原さんは私が疑っている、と言うことにちっとも気づいた様子はなく普段通り。良くも悪くも一定の距離を保っている。
陽菜紀が殺害されてから数々起こった事件や出来事のことはあまり話さなかった。敢えて話題を逸らしているのか私には分かりかねた。
そうして数日間をやりすごし、ある日事態は急変することになる。
その日は私のアパートの最寄り駅からアパートに歩いて帰る途中、唐突に鈴原さんが
「灯理さん……もしかして俺のこと避けてます?鬱陶しいとか思ってます」と聞いてきて私は目を丸めた。



