それから私の持ってきたケーキを二人で食べながら陽菜紀の思い出話をした。小さい頃キッチンでお菓子作りをさせてもらった、とか。おばちゃんの作るホームメードのケーキが美味しかった、とか。陽菜紀のお部屋でお人形遊びもした。
この家には至るところに陽菜紀との想い出が残っていた。

ケーキを食べ終え私は佐竹家を辞去することにした。

「それではまた…」と頭を下げると
「灯理ちゃん、また来てやってくれないか。陽菜紀はきっと喜ぶ」とおじちゃんは寂しそうに笑った。
「ええ、必ず―――……あ、ショートケーキ、陽菜紀大好きだったんです。どうか写真の前に置いてあげてください」と言うと、おじちゃんはちょっとだけ首を捻った。

「あいつが好きだったのはチーズケーキだと思ってたが」

え―――……?

でも私は陽菜紀がショートケーキが一番好きなのを知っている。それに薔薇……やはり飾られていたのは赤い色だった。どうゆうことだろう。

「あ、私の勘違いでした、すみません」と慌てて手を振り今度こそ辞去した。
三軒隣の実家に寄って行こうかとも思ったが、やめた。夜も遅い。帰る電車の中で、私は考えた。

何かがおかしい、と感じていた。どうも私の知ってる陽菜紀と、周りの陽菜紀像とが食い違っている。

何故なんだろう。

無事アパートに帰り着いても、ホテルのレストランの藤堂さんの話をひたすら思い出し、私は帰るなり手帳に思い出せること全てを箇条書きにした。これではまるで刑事みたいだ。あれだけ曽田刑事さんには「首を突っ込むな」と釘を差されていたのに、でも気になるし。書くだけなら大丈夫よ、そう思いながら


手帳に書きつけた箇条書きをカレンダーを見比べて、時系列で表してみた。