「事件の進展が一向に進まず、こちらにも情報が来なかったので、しょうがないでしょう。俺たちも当事者ですよ」と鈴原さんが若干、険のある眼で曽田刑事さんを睨んだ。
「我々は着実に捜査を進めています。しかし関係者に捜査状況を教えるわけにもいかないんですよ」と曽田刑事さんも苛立ったように前髪をぐしゃりと掻き揚げた。
「あの……分かってます。だけど、優ちゃんのことは私たちもやはりショックで」と何だか間を仲裁するように私が言うと
「すみません」と曽田刑事さんが先に謝った。そして周りを気にするようにキョロキョロと辺りを見渡し、誰も居ないことを確認すると私と鈴原さんの肩をちょっと引き寄せて内緒話をするように声を潜めた。
「ここだけの話ですが、片岡 陽菜紀殺しの件で我々も荒井 沙耶香をマークしていたんですよ。まぁマークとは言っても尾行はしていなかったのですが」
と、声を潜めて低く言った。
え……マーク……?
沙耶ちゃんを何故?
思わず鈴原さんと顔を合わせると、鈴原さんもちょっとびっくりして目をまばたいていた。
「片岡 陽菜紀が殺された現場に、タバコの吸い殻が落ちていまして、DNA検査の結果、その吸い殻が荒井 沙耶香のものだと判明しました」
え―――………?
再び鈴原さんを見ると、鈴原さんは開かれた目をさらに大きく開いて曽田刑事さんを見ていた。確かに沙耶ちゃんは愛煙家だった。私も鈴原さんもそれを知っている。
「でも……沙耶香さん、最近陽菜紀に会ってないような雰囲気でしたけど」
と鈴原さんが言い、私も大きく頷いた。
「それは荒井 沙耶香の嘘か、或は荒井 沙耶香はハメられたか。どちらか分かりませんが」
嘘か、ハメられたか―――……



