「守ってあげたい」なんて、男の人に…そんなこと言われたのはじめてだ。そもそも私は男子とそれほど……と言うか全然仲良くなかったし、男の子から告白されたこともない。ましてやそんな風に言われたことがないのだ。慣れない感覚に首の後ろがくすぐったくどこかそわそわと落ち着かない。

「は、話逸れてるよ…」と、私は軌道修正をしながら慌てて手を振る。

「うーん、でもねぇ優子はアイドル的な陽菜紀の立場になりたかったんだと思うよ。みんなの人気者で、可愛くて。
お姫様も同じ種類だけれど、でも何て言うかちょっと敬遠されるって言うか、手が出せない感じがあるから。遠くで眺めてるだけでいい、って言うのかな」
と、沙耶ちゃんはなかなかお姫様説から抜け出せない様。諦めて沙耶ちゃんの話に頷き

「じゃぁ陽菜紀のご主人を奪ったのも、最初から陽菜紀の立場になり替わるため?」と目を上げてく聞くと
「最初からそうだったのかどうかは分かんないけど、でも本心では『陽菜紀の』旦那だったから、って言うのはちょっとあると思うよ」
「なるほど。僕はその優子さんと言う人を知らないのであまり意見できませんが、ちょっとSNSをチェックしたところ、陽菜紀の華やかな生活に被せてきている気がしますね」

「被せる…?」私が聞くと、鈴原さんはスマホを私に見せてくれて
「ほら、この日の陽菜紀の投稿、旦那とイタリアンレストランでデートって言う投稿のすぐ後、優子さんが“彼氏”と行ったと言うフランス料理の写真がアップされてたり」

画面を切り替えて見せてくれて、比べると確かに陽菜紀の投稿の数分後に優ちゃんの投稿があった。

「優子が一方的に張り合ってるって感じはするよね。陽菜紀は気にしてなさそうだけど」と沙耶ちゃん。

「でもさー、これ事実知った後だから言えるけど、優子って結構えげつないよね。陽菜紀もまぁ、仮面夫婦装ってたかもしれないけれど、まるで旦那さんが自分の方を愛してるんだって見せつけてるみたいで。ま、陽菜紀が優子のSNSチェックしてたのかどうかは分かんないけど」