「流石にそれは分かんないな…」と沙耶ちゃんが言い「俺も聞いたことないですね。灯理さんの名前しか」とちょっと考える。「バイト仲間はみんな友達って感じじゃなかったですし、まぁ逆に恨みをかってたと言えばその線も濃くなってきますけれど、何で今更?って感じがしません?」と言われて、もっともだ、と私も頷いた。
「SNSのフォロワーはたくさんいますけれど。でも1万以上のフォロワーを全員当たるのは厳しいですね」と鈴原さんがスマホを取り出し陽菜紀のSNSを開く。
確かに、効率も悪いし、その中からたった一人を見つけるのは難しい。
「でも、頻繁に陽菜紀のSNSにコメントしてる人とか、ちょっと粘着質な人だったりとか、逆にちょっと攻撃的な人とか、いるんじゃないですか」
「まぁあの子すっごい好かれるか、嫌われるかどっちかだよね」と沙耶ちゃんが苦笑いで言い、煙を口から吐き出した。
「嫌われるってのは何となく分かります。俺のバイト時代の友人はほとんど陽菜紀のこと嫌ってましたし……」
鈴原さんは苦笑を浮かべた。
「でも…小学校や中学校……沙耶ちゃんは知らないだろうけど、高校時代も陽菜紀はみんなのアイドルだったんだよ」私が言い添えると
「アイドルね~…」と沙耶ちゃんがちょっと考えるように煙を吐き出し首を傾げた。
「まぁ確かに人気はあったよね。クラスのほとんどの男子が陽菜紀のこと好きだったし。
でも、私には陽菜紀がアイドルなら、灯理ちゃんはお姫様って感じに見えたよ」
お、お姫様……!!?
そんなこと言われたのはじめてで、私の顔が熱くなっていくのが分かる。お姫様って言えば誰でも一度は童話で目にしたり耳にしたりする物語に登場する。白雪姫にシンデレラ、人魚姫。そのどれもがふわふわのきれいなドレスをきてキラキラしていて輝かしく、みんなに愛されるキャラクターだ。幼い頃は何度もその存在に憧れた。
「お、お姫様だったら…陽菜紀の方が似合ってるよ」と思わず苦笑いで沙耶ちゃんの考えを否定すると
「あー、でも何となく分かる気がします。
何て言うか守ってあげたいって気にさせられるんですよね」と鈴原さんもにっこり笑って同意。
す、鈴原さんまで!!



