陽菜紀がいなくなって、優ちゃんはご主人と彼の子供を得ることができる。
立派な動機だ。
好未ちゃんは今日から二泊三日で社員旅行があるから沖縄から帰れないらしい。『詳しく聞きたいけれど』と名残惜しそうにはしていたけれど。
その三十分後に沙耶ちゃんからも電話が掛かってきて、こちらも会社に出勤していて、どうやら帰り道らしい。私は好未ちゃんに話した内容をそのまま沙耶ちゃんに伝え、沙耶ちゃんも同じように驚いていた。
『友達の旦那取るとか見境ないね』とちょっと呆れている。『でもまぁ、あの二人元々“友達同士”って感じじゃないしね。特に優子は。あの子、陽菜紀をすっごいライバル視してたじゃん?』
それは好未ちゃんも麻美ちゃんも言ってた。小学校の時からそうだったらしいけれど、私は全然気づかなかった。周りが見えてなかったことを恥じると
『灯理ちゃんはそれでいいんだよ。スレてないって言うのかな~
なんて言うの?そうゆう汚いところを見ない純粋さがあって、ちょっと羨ましいよ』
スれてない?純粋?
沙耶ちゃんに言われて自分を分析してみたけれど、自分が純粋だとは思わない。
「純粋だったら私……優ちゃんにあんな酷いこと言わなかった。そしたら優ちゃんも危険な目に遭わなくて済んだかもしれない」
『自業自得だよ。私が灯理ちゃんでも同じこと……ううん、それ以上言ってた。
人の旦那寝取っておいてよく平気で居られるよね。おまけに子供産むとか、身勝手にも程があるよ。まぁ、子供に罪はないけれどね』
久保田刑事さんが同じようなことを言っていたことを思い出す。
『とりあえず、今日は遅いから。明日なら時間作れるけど、どっかで話せない?』と沙耶ちゃんの方が切り出してくれて私はそれに頷いた。
時間と場所を決めてメモをし、そして再び鈴原さんに電話を掛けた。



