好未ちゃんと沙耶ちゃんはすぐに電話が繋がらなかった。土曜日だもの、何かしらプライベートが立て込んでいるのだろう。じりじりした気持ちでそれから三時間程待つと、

好未ちゃんから電話が掛かってきた。好未ちゃんは社員旅行で沖縄に来てる、と言う。

『イマドキ社員旅行とか古いよね。しかも半強制。これってパワハラじゃない』と好未ちゃんはきっと優ちゃんのことを知らないのだろう、開口一番に愚痴った。今は夜の宴会が催されているらしく、社員の大半が酔っぱらっているようで、その隙に抜け出して電話をくれたみたい。

「忙しいときにごめんね。実は優ちゃんが…」
私は手短に今日起きたことを説明した。

『は―――!?優子が流産!?しかもお腹の子の父親は陽菜紀の旦那さん!?』
鈴原さんと同じような反応で、この様子からすると優ちゃんのお相手が誰だか、好未ちゃんも知らなかったようだ。

『ちょ…!ちょっとそれ、どういうこと!?あの子、友達の旦那と不倫してたってこと!?』
「そうみたい……私も今日はじめて知ったのだけど…。好未ちゃんは優ちゃんが誰かの愛人だったって優ちゃんから聞いてたんだよね」
確認するために聞くと

『いや…実の所愛人ってところまでハッキリ聞いてないんだ。でも話口調で分かるじゃない?
優子の“彼氏”やたらと羽振りがいいし、優子はその“彼氏”に色々貢いでもらってたみたい
まぁそこまで優子にしてくれてるし、優子も好きだったわけじゃない?だったら結婚すればいのに、って言ったのね、私。そしたら優子、急に機嫌悪くなっちゃってさー。
あ、これは不倫か?愛人か?って……そう思ったわけ』

好未ちゃんの話に頷きながら、私はふと優ちゃんの姿を思い浮かべた。陽菜紀のお通夜のとき、優ちゃんはやけに上機嫌なように思えた。そりゃ少しは悲しむ素振りを見せていたけれど、あくまで“フリ”な気がしたし、好未ちゃんと麻美ちゃんがお手洗いで噂話していたように、単なる人の不幸を利用して人気を獲得しようとしていた、としか思ってなかった。

それだけでも充分不謹慎だが、優ちゃんが本当に嬉しかった理由は―――

陽菜紀がいなくなったからだ。