取り調べから戻ると、別の同僚…と言うか後輩に当たる刑事が「曽田さん、さっきのＴＶ局に送られてきた写真誰が撮ったのか判明しましたよ」と言いながら駆け寄ってきた。
「片岡 陽菜紀が雇った探偵らしいです。これ、見てください」
とデスクに出されたのは、片岡 陽菜紀の通帳のコピーで、事件が起こる約一か月前に500,000円の金が陽菜紀の口座から、「アリヨシタンテイジムショ」に振り込まれていた。
50万は浮気調査の相場で、怪しいところはない。でも…なるほど、これであの写真がやけに鮮明に撮られていたワケが分かった。プロの仕業だったのだ。
「探偵の話に寄ると依頼を受けたのは半年程前で、片岡 陽菜紀本人が直接事務所を訪ねてきたらしいです。そのときに着手金として10万を支払った形跡も残っています」
「この探偵がテレビ局に？」と後輩に聞くと、後輩は首を横に振った。
「写真もデータも片岡 陽菜紀に渡して、事務所には何も残ってないらしいです。別班に確認してもらいましたが、それは確かです。念のためハードディスクを押収してきましたが、今の所慌てて削除した形跡も見当たらないらしいです」
「探偵もシロか」
では一体誰が何の為に、中瀬 灯理の名前を使ってわざわざ厚木 優子と片岡 伸一との不倫騒動をリークしたのか。
「捜査を混乱させるために決まってますよ」と、隣で分かりやすくため息をつき久保田が写真をデスクに放り投げる。
ただ単にそれだけが目的だったのだろうか。もっと違う目的があったように―――思えるが、これはただの“刑事の勘”ってヤツだ。そこに確たる証拠も何もない。
だが刑事の勘って言うヤツが、頭の中で騒いでいる。
これからまた―――
何かが起こる予感だ。
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